Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター コメディカル
循環器2

(S781)

心エコー図検査にて左心室に流入する血流が描出しえた左冠動脈左心室瘻の一例

A case of coronary arterial fistula which bloodstream to flow into the left ventricle by an examination for ultrasonic cardiogram was able to depict

中村 和広1, 椎野 憲二2, 高橋 礼子1, 杉本 邦彦1, 杉本 恵子3, 高田 佳代子2, 石井 潤一1, 岩瀬 正嗣3, 尾崎 行男2

Kazuhiro NAKAMURA1, Kennji SHIINO2, Ayako TAKAHASHI1, Kunihiko SUGIMOTO1, Keiko SUGIMOTO3, Kayoko TAKADA2, Jyunnichi ISHII1, Masatugu IWASE3, Yukio OZAKI2

1藤田保健衛生大学病院臨床検査部, 2藤田保健衛生大学医学部循環器内科, 3藤田保健衛生大学医療科学部

1clinical laboratory, Fujita Health Univercity Hospital, 2cardiovascular medicine, Fujita Health Univercity, 3medical scientific council, Fujita Health Univercity

キーワード :

【症例】
81歳,男性
【既往歴】
前立腺癌(前医にてホルモン療法中)
【現病歴】
2012年7月某日,他院にて定期的に行った心電図検査にて心筋梗塞の疑いがあり入院となった.夜間に胸痛を認めたため,当院に転院搬送となった.心電図や心エコー図検査所見から前壁中隔心筋梗塞の診断となった.入院直後の心エコー図検査では,心室壁に異常血流シグナルを認めていた.
【入院時検査所見】
心電図ではV1〜V3でQSパターン,V1〜V4でST上昇,V5,V6で陰性T波を認めた.
心エコー図検査では,LVDd/Ds:70/60mm,IVSd/LVPW:6/11mm,EF:25%(modified-bp-Simpson法)であり,前壁中隔はakinesisで菲薄化し一部で輝度上昇を認めた.また,カラードプラにて心尖部,後側壁に異常血流シグナルを認めた.また,パルスドプラでは拡張期優位のフローパターンであった.
【臨床経過】
発症時期が不明であり,自覚症状も薬剤にてコントロールできていたため,第4病日に待機的に冠動脈造影検査を施行した.左前下行枝は本中間部で完全閉塞を認め,その他の左冠動脈の著明な拡張を認めた.また左冠動脈造影後,左心室内濃染の所見も認め,左冠動脈左心室瘻と診断した.
その後,心筋シンチグラフィーにて虚血の評価を行うも前下行枝領域にviabilityを認めないため,保存的治療にて経過を見る方針となった.
【考察】
本症例は冠動脈心室交通症であり,冠動脈と心室内との間に直接的な心筋内交通(複数の瘻孔により形成)を有している.頻度としては,全冠動脈造影検査施行例中の0.0001〜0.0006%とされている.本症例のように二次的に冠動脈拡張を伴うことが多く,その機序として発生学的異常による先天性要因や心筋内での微小循環障害,心内腔と冠動脈の圧較差などが考えられる.
本症例はフォローアップの心エコー図検査にて後側壁がやや肥大し,その中に多数の流入血流を拡張期に認め,短絡量の多い冠動脈心室瘻と判断された.冠動脈痩は,左右いずれかの冠動脈が,心腔または大血管腔に直接開いて痩を形成する疾患で,開口部位としては右室が最も多く,ついで右房,冠静脈,肺動脈で,左房・左室への痩は稀である.
本症例は入院時の心エコー図検査にて異常血流シグナルは捉えられており,冠動脈造影検査にて確定診断に至ったが,心エコー図検査を行う際には,稀ではあるが本症例のような先天的な疾患を念頭に置いた観察の必要があると思われた.