Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター コメディカル
循環器2

(S781)

卵円孔開存により脾梗塞を合併した肺血栓塞栓症の一例

A case of pulmonary embolism with thrombus through patent foramen ovale complicated splenic infarction

谷 久弥子1, 穂積 健之2, 丸山 将広3, 波元 智香1, 有馬 隆幸1, 馴松 佑紀1, 服部 玲治4, 谷口 寛昌3, 榎本 志保3

Kumiko TANI1, Takeshi HODUMI2, Masahiro MARUYAMA3, Chika NAMIMOTO1, Takayuki ARIMA1, Yuuki NAREMATSU1, Reizi HATTORI4, Hiromasa TANIGUCHI3, Shiho ENOMOTO3

1大阪府済生会野江病院臨床検査科, 2大阪市立大学医学部附属病院循環器内科, 3大阪府済生会野江病院循環器内科, 4大阪府済生会野江病院心臓血管外科

1Department of Clinical Laboratory, Osaka Saiseikai Noe Hospital, 2Department of Cardiology, Osaka City University Hospital, 3Department of Cardiology, Osaka Saiseikai Noe Hospital, 4Department of Cardiovascular Surgery, Osaka Saiseikai Noe Hospital

キーワード :

【はじめに】
卵円孔開存は健常人の27%に認め,肺血栓塞栓症と診断された患者のうち,経食道エコー図での卵円孔開存は35%に認める.また卵円孔を介する奇異性塞栓症のうち脾梗塞は2%と稀であると報告されている.今回,卵円孔開存により脾梗塞を合併した肺血栓塞栓症の症例を経験したので報告する.
【症例】
70歳女性.2013年4月初旬に突然の呼吸困難を自覚し,一週間経過したが症状増悪したため近医受診.肺塞栓症の疑いにて当院紹介受診となった.初診時の血圧120/80mmHg,脈拍120/分,整,SpO2%(マスク4L/分),心雑音および肺ラ音は聴取せず,左下肢浮腫と腫脹を認めた.血液検査では白血球14700/μl,CRP4.33mg/dlと炎症所見を認め,凝固・線溶系検査ではD-dimer
20.5μg/ml,FDP24.9μg/mlと2次線溶の亢進を認めた.プロテインC活性は正常範囲内,抗カルジオリピン抗体やループスアンチコアグラントは陰性であった.心電図検査ではSQTパターンを呈し,V14で陰性T波を認めた.胸部X線では肺動脈主幹部陰影の拡大を認めた.急性肺血栓塞栓症を疑い造影CTを施行したところ,肺動脈主幹部および左大腿静脈,下腿静脈に血栓を認め,脾臓には部分梗塞を認めた.頭部CT検査では脳梗塞所見は認めなかった.心エコー図では右房,右室の拡大,McConnell徴候,推定右室圧の軽度上昇(三尖弁圧較差36mmHg),左室の扁平化,心房中隔に連続した可動性を有する紐状の心房内血栓を認めた.この血栓は卵円孔を介し,右房から左房に侵入していると考えられた.直ちに下大静脈フィルターを留置し,ヘパリン抗凝固療法が開始され,血栓の外科的摘出が考慮された.手術前の経食道心エコー図においても,卵円孔を介し連続した紐状の両心房内血栓を確認でき,肺動脈血栓除去術,右房左房内血栓除去術および卵円孔閉鎖術が施行された.
【考察】
右心腔内血栓を合併した急性肺血栓塞栓症の院内死亡率は44.7%と非常に高率で,卵円孔開存は予後増悪因子である.また循環虚脱に陥った場合,手術死亡率は20〜50%と高率である.急性肺血栓塞栓症では右心腔内の血栓検索,心房中隔周辺の血栓検索(卵円孔開存)を慎重に行うことが重要であると考えられる.
【結語】
今回我々は,卵円孔開存により両心房内血栓を認め,脾梗塞を合併した肺血栓塞栓症の一例を経験した.