山口 一人¹, 吉冨 裕之¹, 安達 和子², 新田 江里¹, 三島 清司¹, 長井 篤¹, 田邊 一明²

Kazuto YAMAGUCHI¹, Hiroyuki YOSHITOMI¹, Tomoko ADACHI², Eri NITTA¹, Seiji MISHIMA¹, Atsushi NAGAI¹, Kazuaki TANABE²

¹島根大学医学部附属病院検査部, ²島根大学医学部循環器内科

¹Laboratory Medicine, Shimane University Hospital, ²Department of Cardiology, Shimane University Faculty of Medicine

キーワード :

【背景】
心エコー図検査によるスペックルトラッキング法は，左室（LV）のストレインや捻れなど左室機能の微細な変化を評価できる新たな指標として用いられている．大動脈弁狭窄症（AS）患者においてもその有用性が示されている．今回我々は，ASの重症度と3Dスペックルトラッキング法による左室心尖部rotationの関係について検討した．
【方法】
対象は左室駆出率（LVEF）の保たれた（50％以上）AS患者18例（79±8歳，弁口面積0.9±0.4 cm2，平均圧較差　39±21mmHg）である．対象をASの重症度のより軽度AS，中等度AS，重症ASの3群に分けた．全例に心エコー図検査を行い，左室心尖部rotation，global longitudinal strain（GLS）を3Dスペックルトラッキング法により計測した．心エコー図指標及び左室心尖部rotation，GLSを3群間で比較検討した．
【結果】
軽度ASは5例（70±5歳，弁口面積　1.7±0.3cm2，平均圧較差　13±6mmHg），中等度ASは3例（77±10歳，弁口面積　1.0±0.1cm2，平均圧較差　27±3mmHg），重症ASは10例（83±5歳，弁口面積　0.7±0.2cm2，平均圧較差　51±18mmHg）であった．LVEFは，AS3群間に有意差は認めなかった（66±2，70±3，70±7％；ANOVA p=0.24）．GLSは3群間で有意差を認め，重症度が高くなるほど低値を示した（-16.2±1.9，-14.3±0.4，-10.7±1.9％；ANOVA p=0.004）．一方で左室心尖部rotationは重症度が高くなるほど有意に亢進していた（6.6±1.1，12.5±2.5，14.9±2.5％；ANOVA p=0.03）．
【結語】
LVEFの保たれたASにおいて重症度が進行するほどGLSは低下し，左室心尖部rotationは亢進していた．