Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター コメディカル
循環器1

(S778)

脚気心と貧血による高拍出性心不全に肺高血圧症を合併した一例

A case of high out put heart failure caused by beriberi heart and severe anemia with pulmonary hypertension

佐藤 ゆかり1, 小林 淳2, 元木 ゆみ1, 堀越 裕子1, 目黒 サキ子1, 及川 雅啓2, 義久 精臣2, 大花 昇1, 竹石 恭知2, 志村 浩己1

Yukari SATO1, Atsushi KOBAYASHI2, Yumi MOTOKI1, Yuko HORIKOSHI1, Sakiko MEGURO1, Masahiro OIKAWA2, Akiomi YOSHIHISA2, Noboru OHANA1, Yasuchika TAKEISHI2, Hiroki SHIMURA1

1福島県立医科大学附属病院検査部, 2福島県立医科大学附属病院循環器内科・血液内科

1Central Laboratory, Fukushima Medical University, 2Department of Cardiology and Hematology, Fukushima Medical University

キーワード :

【はじめに】
ビタミンB1の欠乏による脚気心は,末梢血管抵抗の低下を伴った高心拍出性心不全の病態であるが,しばしば肺高血圧症を合併することが報告されている.また高度の貧血も高心拍出性心不全を伴うことが知られている.今回我々は脚気心と貧血による高心拍出性心不全に肺高血圧症を合併した一例を経験したので報告する.
【症例】
40代女性
【主訴】
浮腫
【既往歴】
鉄欠乏性貧血にて治療
【現病歴】
2か月前より両下腿の浮腫が出現,全身の浮腫が増悪したため当院を受診した.採血にてHb 3.8 g/dlの高度貧血が認められ血液内科入院.胸部X線にて心拡大あり循環器内科紹介となる.
【検査所見】
胸部X線CTR 70%,血液検査にて,RBC 169×104/μl,Hb 3.8 g/dl,Hct 12.5%,MCV 74.1 fl,MCH 22.7 pg,MCHC 30.6%,Fe 15μ/dl,Ft<10 ng/mlの鉄欠乏性貧血が認められた.また,BNP 652 pg/mlと上昇が認められた.
【体表面心エコー図所見】
壁運動は過収縮で左室駆出率75%であった.右室,右房の拡大と左室圧排所見を認めた.重度の三尖弁逆流が認められ,右室と右房の圧較差46 mmHgで下大静脈の拡大と呼吸性変動の低下が認められた.
【入院後経過】
入院後に貧血による高拍出性心不全と考えられ鉄剤の投与,利尿剤の投与が開始された.貧血は徐々に改善傾向が認められたが,高心拍出状態と重度三尖弁逆流,肺高血圧症は残存した.血液検査にてビタミンB1が13 ng/mlと低値であり,脚気心の診断にてビタミンB1の内服が開始された.更なる貧血の改善,ビタミンB1の上昇により,緩徐に左室流出路での時間流速積分(LVOT VTI)の低下が認められ,高心拍出状態の改善の所見が認められた.また,ビタミンB1の内服開始後より三尖弁逆流の減少,肺高血圧症の改善,右心系の拡大所見の改善,左室圧排所見の消失が認められ,脚気心に伴う肺高血圧症と診断した.また高心拍出性心不全,肺高血圧症の改善に伴いBNP値の低下が認められた.
【まとめ】
脚気心は重症化することもある疾患であり,高心拍出性心不全に肺高血圧症を合併しているときには,鑑別を要する疾患として念頭に置く必要がある.