大野 佑子¹, 麻植 浩樹², 山中 俊明¹, 三好 亨³, 河野 晋久¹, 西井 伸洋¹, 中村 一文¹, 森田 宏¹, 伊藤 浩¹

Yuko ONO¹, Hiroki OE², Toshiaki YAMANAKA¹, Toru MIYOSHI³, Kunihisa KONO¹, Nobuhiro NISHII¹, Kazufumi NAKAMURA¹, Hiroshi MORITA¹, Hiroshi ITO¹

¹岡山大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科学, ²岡山大学病院超音波診断センター, ³岡山大学大学院医歯薬学総合研究科先端循環器治療学講座

¹Cardiovascular Medicine, Okayama University, ²Center of Ultrasonic Diagnostics, Okayama University, ³Cardiovascular Medicine, Okayama University

キーワード :

【症例】
38歳，男性．
【主訴】
労作時息切れ
［現病歴］
以前より検診にて心電図異常を指摘されていた．2012年末頃より労作時の全身倦怠感を時折認めていた．一週間前より労作時息切れがあり，仰臥位にて呼吸困難，乾性咳嗽を認めたため近医を受診．心不全の診断にて前医に紹介となった．前医での検査にて左室区出率LVEF:20-30％と低左心機能あり，拡張型心筋症（DCM）疑いのため，精査・加療目的に当院紹介となる．
【家族歴】
母：DCM　60歳で死亡
父：DCM　44歳で突然死
母方の祖母：　DCM
［冠危険因子］
喫煙20本/日×18年
【身体所見】
血圧118/86mmHg，脈拍80/min，SpO2 98％（O2 2L），dry & warm，頚静脈怒張軽度
心音：Ⅲ音，Ⅳ音を聴取できず．心雑音を聴取せず．
右下肺で呼吸音低下
下腿浮腫を認める
［検査所見］
当院12誘導心電図洞調律poor R progression（前医では心房細動）
胸部レントゲン写真:心拡大，右胸水の貯留を認めた．
BNP=787pg/ml
経胸壁心エコー図検査ではLVDd/Ds=52/42mm，LVEF=27％とび慢性に壁運動の低下を認めた．僧帽弁通過血流波形はpseudonormal patternであった．両心房の拡大を認め，左心耳内を埋めるように，可動性を有する血栓（42×20mm）を認めた．
その後，施行した経食道心エコー図検査では，左心耳に可動性を有する血栓（42×20mm）を認めた他，右房内（右心耳）にも40×10mmの表面が可動性に富んだ血栓を認めた．
血栓塞栓症のリスクが高いと考え，緊急手術による両心房内血栓の摘出術，肺静脈隔離術，左心耳縫縮術を行った．
【考察】
心機能低下例や心不全例では左心耳血栓だけでなく右心耳内に血栓が形成されることも有り，心エコー図検査により注意深く観察を行い，見逃さないようにすることが重要である．