Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 甲状腺
甲状腺一般示説2

(S770)

先端巨大症患者における甲状腺超音波所見の検討

Evaluation of thyroid ultrasonographic findings in cases of acromegaly

江戸 直樹1, 3, 宮川 めぐみ1, 鈴木 尚宜1, 竹下 章1, 竹内 靖博1, 山田 正三2

Naoki EDO1, 3, Megumi MIYAKAWA1, Hisanori SUZUKI1, Akira TAKESHITA1, Yasuhiro TAKEUCHI1, Shozo YAMADA2

1虎の門病院内分泌センター内科, 2虎の門病院内分泌センター外科, 3防衛省人事教育局医務室

1Department of Medicine, Endocrine Center, Toranomon Hospital, 2Department of Surgery, Endocrine Center, Toranomon Hospital, 3Bureau of Personnel and Education, Ministry of Defense

キーワード :

【背景】
先端巨大症においては多結節性甲状腺腫の頻度が高いとされている(Endocr Rev 25(1):102-152,2004).一方,甲状腺癌の合併も多いとの報告があるものの一般的には比較的稀とされている.今回,当院における甲状腺エコーを実施した先端巨大症についてまとめたので報告する.
【対象】
2010年から2013年までに当院間脳下垂体外科で手術された先端巨大症326人のうち,術前または術直後に当院内分泌内科に精査入院し,甲状腺エコーを実施し得た100名の甲状腺エコー結果を後ろ向きに解析した.
【結果】
対象のうち,手術既往例が6例,TSH産生下垂体腺腫合併例が6例,ATFN合併例が1例,バセドウ病合併例が1例,濾胞腺腫例が1例,橋本病合併例が5例,副腎性Cushing症候群合併例が1例,術後に無痛性甲状腺炎を来した症例が1例あった.残り78例について,数年以上ドパミンアゴニスト治療を受けていた2例を除いた76例中3例(4.0%)に甲状腺乳頭癌を認めた.これらの超音波所見としては通常の乳頭癌症例と同様であったが,多結節性甲状腺腫の中に混じっている例もあり注意を要した.この3例と残り73例の間での内分泌所見の比較ではTg値に有意差を認めたものの(p<0.05),GHやIGF-1,サンドスタチン試験でのGH変化率,甲状腺機能には有意差を認めなかった.甲状腺乳頭癌を認めなかった73例について,その超音波所見から正常甲状腺サイズで内部に結節等を認めない群(group 1: 10人),正常甲状腺サイズながら内部に嚢胞や結節の散在を認める群(group 2: 15人),び漫性に甲状腺腫大を認めた群(group 3: 16人),多結節性甲状腺腫を認めた群(group 4: 32人)に分類された.また,甲状腺腫大を認めなかった群(group 1+2)と甲状腺腫大を認めた群(group 3+4)の間で加療開始前の内分泌所見等との比較を行ったところGHの底値で有意差を認めた(p<0.05).
【考察】
本検討では,21.9%にび漫性甲状腺腫大を認め,61.8%に嚢胞や充実性結節を認めた.また,甲状腺腫大を認める群と認めない群との比較から,甲状腺のサイズにはGHの過剰分泌の程度が関与する可能性が示唆された.超音波検査による甲状腺乳頭癌の発見率は0.49%との報告がある(日本甲状腺学会雑誌1(2):109-113,2010).今回の検討は連続症例による検討ではないものの,当院における全先端巨大症手術症例(n=326)に占める割合として0.92%であり,先端巨大症患者における甲状腺乳頭癌は稀ではないことが示唆された.先端巨大症患者における,甲状腺超音波検査によるスクリーニングの重要性を改めて示す結果と考えられた.