Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 乳腺
症例検討P/その他

(S763)

乳腺の顆粒球肉腫の1例

A Case of Granulocytic sarcoma of the Brest

石水 弘子1, 竹中 正人1, 中戸 洋行1, 大前 嘉良1, 木下 博之1, 玉置 達紀1, 田村 志宣2, 尾崎 敬1, 宮本 一雄1, 長岡 眞希夫3

Hiroko ISHIMIZU1, Masato TAKENAKA1, Hiroyuki NAKATO1, Yosikazu OOMAE1, Hiroshi KINOSITA1, Tatunori TAMAKI1, Sinobu TAMURA2, Takasi OZAKI1, Kazuo MIYAMOTO1, Makio NAGAOKA3

1社会保険紀南病院中央臨床検査部, 2同内科, 3同外科

1Central clinical laboratory, Social Insurance Kinann Hospital, 2internal medicine, Social Insurance Kinann Hospital, 3Surgery, Social Insurance Kinann Hospital

キーワード :

【はじめに】
顆粒球肉腫(Granulocytic sarcoma)は未熟な骨髄系細胞が腫瘤を形成する骨髄増殖性疾患である.発生頻度は白血病患者の3.1-10.9%,性差はなく,あらゆる年齢層に発生する.今回我々は,乳腺腫瘤を主訴とした顆粒球肉腫を経験したので報告する.
【症例】
70歳代,女性.10年来の間接リウマチを他院にて加療中であった.2010年5月に両側乳房に腫瘤を自覚し乳がんを疑い,当院外科を受診された.身体所見では両側乳房,皮下にも腫瘤を認め,細胞診と生検を施行した.
【初診時検査】
血液検査は,CRP 2.49 mg/dl,可溶性IL-2レセプター1154U/mlと上昇.腫瘍マーカーはCEA5.6ng/mlと軽度上昇.その他には有意な所見は見られなかった.
【乳房超音波検査】
右乳房C領域に3.8×2.9mmと左乳房C/D領域に7.0×5.1mm,形状は楕円形,境界明瞭,内部低エコーの腫瘤を認め,カテゴリー4とした.又,右側胸部皮下に15.1x12.6mmの腫瘤を認め,形状は不整形,境界明瞭,辺縁不整,内部低エコ−でやや不均一,血流は内部定状波,辺縁には拍動波血流を認めた.これらの所見より悪性リンパ腫を疑った.
【マンモグラフィ検査】
両側の乳腺に約10mmの境界明瞭〜不明瞭な腫瘤影を多数認め,カテゴリー5であった.
【PET/CT検査】
肺多発結節,皮下多発結節,甲状腺周囲〜縦隔内のリンパ節,肝臓S6に集積を認め,肺がん,乳がん,皮膚転移などが疑われた.
【骨髄穿刺所見】
骨髄穿刺標本では,白血球,赤血球,血小板の3細胞系列に異常を認め,骨髄異形成症候群(MDS)が示唆された.
【乳腺穿刺吸引細胞診】
パパニコロウ染色では孤立散在性〜集塊状のやや大型細胞を認め,類円形,核の大小不同,クロマチン増量,明瞭な核小体を認めた.ギムザ染色ではアズール顆粒を有する細胞を認め,組織型不明な悪性と診断した.以上の所見より,精査目的の為,右側胸部皮下腫瘤を摘出した.
【組織所見】
摘出された腫瘤は,約30mmで,境界明瞭な乳白色であった.腫瘤の病理検査では,広範な壊死や好酸性で比較的広い細胞質,類円形の核小体と細顆粒状のクロマチンを有する異型細胞の浸潤増殖を認めた.免疫染色では,T,B cell系は陰性,CD30,CD68(Kp-1),骨髄ペルオキシタ−ゼ(MPO)が陽性,染色体検査はG-band:add(21)(q22)を含む異常を認め,これらの所見より顆粒球肉腫と診断された.
【まとめ】
顆粒球肉腫(Granulocytic sarcoma)は,骨髄細胞由来の髄外腫瘤形成性腫瘍,と定義され,全身の皮膚,リンパ節,乳房,など多彩な部位に腫瘤を発現するまれな疾患である.超音波検査において質的診断は困難であるが,乳房や皮下に腫瘤形成を認めた骨髄異形成症候群(MDS)や白血病などに,本疾患を考慮する事も必要である.