Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 乳腺
症例検討P/その他

(S763)

類皮嚢胞感染を示唆する特徴的な超音波像を呈した乳輪下膿瘍の一例

A case report of subareolar abscess caused by epidermoid cyst infection at subareolar area with multilaminar echogenicity on sonography

中谷 守一

Shuichi NAKATANI

南大阪病院乳腺外科

Breast Surgery, Minami Osaka General Hospital

キーワード :

症例は40歳閉経前女性.乳輪下膿瘍の既往歴あり.最終月経は受診前の5日間.月経終了翌日に初診.受診前日から右乳輪部皮膚が赤く,痛みがあった.右乳頭は陥没し乳輪部皮膚の発赤,熱感とわずかな膨隆がみられ圧痛をともなった.発赤乳輪下に3.2×3cmの腫瘤を触知した.乳房超音波検査では乳輪皮下に低エコー域を認め内部に楕円形の高エコー域があり,多層性構造にみえるのが非常に特徴的であった.18Gの注射針で穿刺したところ膿をわずかに吸引しえたが内部の高エコー多層性構造物は吸引できなかった.切開術などが必要と考えられたが患者の希望で抗菌剤治療のみ実施した.数日後,膿の細菌検査でグラム陽性球菌が検出された.乳輪下膿瘍は4.3×3.3cmと増大しており発赤と波動が明らかとなったため局所麻酔下に乳輪縁で約4mm径の小孔を穿ち切開排膿処置を実施した.しかし皮膚切開によっても膿汁の排出はわずかであった.内部の高エコー多層性構造が切開孔を閉塞させていると考え,膿瘍腔内部の白色構造物を除去したところ膿汁の流出を認めた.当初,乳頭陥凹とその深部の膿瘍形成について乳管上皮の扁平上皮化生と乳管閉塞そして細菌感染による乳輪下膿瘍形成という一連の病態を考慮していたが,除去物は病理学的にkeratin debrisであり,このような厚いkeratin debrisは類皮嚢胞が原因であると評価された.その後,膿瘍は急速に改善した.処置には類皮嚢胞切除術が必須と判断した.しかし陥没乳頭に対する乳頭形成術などの追加処置も考慮されるため患者の希望により未施行である.本例は乳輪下膿瘍と単純に診断するのではなくmultilaminar echogenicityやonion-like appearanceを呈す超音波画像でkeratin contentを想起できた際には乳輪下の類皮嚢胞という病態をも考慮する必要がある.本超音波像(図)は類皮嚢胞の局在部位としてはまれな乳輪下とはいえども類皮嚢胞とその感染という病態を非常によく表現する特徴的な画像と考えられるので報告する.