Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 乳腺
症例検討P/その他

(S762)

乳房超音波における嚢胞内腫瘤像の検討

Ultra sonic evaluation of the breast cystic tumor

長谷部 愛1, 物部 真子1, 森 宏樹1, 水谷 哲1, 吉留 克英2

Ai HASEBE1, Masako MONOBE1, Hiroki MORI1, Tetsu MIZUTANI1, Katsuhide YOSHIDOME2

1大阪警察病院臨床検査科, 2大阪警察病院乳腺外科

1Department of Clinical Laboratory, Osaka Police Hospital, 2Department of breast surgery, Osaka Police Hospital

キーワード :

【はじめに】
乳腺嚢胞内腫瘤は乳癌検診の普及や画像診断技術の進歩により発見される頻度が増加しているが,良悪性の鑑別が困難なことがある.今回,当院における嚢胞内腫瘤の超音波所見について検討したので報告する.
【対象と方法】
2011年1月〜2013年9月に当院において超音波検査(US)にて検出された嚢胞内腫瘤のうち,病理診断が確定した32例を対象とした.年齢,腫瘍径,発見契機,超音波所見と局在(中心性,末梢性)を比較,検討した.
【結果】
嚢胞内腫瘤像を示した32例中,17例が病理組織学的に悪性と診断された(浸潤癌(IDC群)3例,非浸潤性乳管癌(DCIS群)14例).残り15例は臨床的あるいは病理学的に良性と診断された.
年齢はDCIS群で24〜85歳(中央値67歳),IDC群で38〜59歳(中央値40歳),良性群で42〜84歳(中央値50歳)である.また,嚢胞内腫瘤像を示した32例中1例が男性で,嚢胞内乳頭癌であった.
発見契機は悪性群では腫瘤自覚15例,血性乳頭分泌4例,画像発見1例,良性群では腫瘤自覚10例,血性乳頭分泌4例,画像発見4例であった.
超音波所見は,嚢胞の形状は円形〜楕円形,分葉状,辺縁がやや不整なものと多彩であった.平均腫瘤径は,DCIS群30.1mm,良性群22.9mm.病変の局在を,乳頭近傍の乳輪部にかかるものを中心性とし,乳頭から離れたものを末梢性として分けると,悪性群で中心性6例(男性嚢胞内乳頭癌1例を含む),末梢性11例,良性群で中心性11例,末梢性4例であった.
嚢胞内部の充実部分の形状は,整〜不整形と様々であった.悪性の割合は,充実部分が平坦で広基性なもの13/19例,不整な隔壁を伴うもの2/2例,液面形成を伴うもの3/6例,充実部の嚢胞壁からの立ち上がりが急峻なもの0/8例であった.カラードプラを施行した17例中9例は血流を認めるも,良悪性両群に有意差は認めなかった.IDC群において動画で確認したところ,2例で嚢胞壁外への浸潤像を認めた.
【考察】
嚢胞内病変において良悪性群を比較すると,従来から報告されているように嚢胞内乳頭腫のほうが若年で,腫瘤径が小さい傾向がみられた.また,病変の局在をみると,嚢胞内乳頭腫は中心性が73%,末梢性が27%であったが,非浸潤性乳管癌では末梢性が65%を占めた.ただし,男性乳房においては,中心性であっても悪性を疑う必要がある.
嚢胞内部の充実部分の形状は多彩であり,Bモード上,良悪性の鑑別が困難な例も認めたが,悪性例の76%は充実部分が平坦で広基性であり,USによる詳細な観察が重要である.
IDC群を動画記録にて再評価すると,2例で嚢胞壁外への浸潤像が認められ,超音波動画  記録は嚢胞性病変の壁外浸潤の診断に有用であると考えられた.他の読影者にても浸潤 所見が確認でき,より客観的な評価が可能であった.
また,嚢胞性腫瘤の経過観察中に,腫瘤径21mm→15mm→28mmと変化し,内部の充実部分が増大し不整不均一に変化した例がIDCであった.このような経時変化を示す症例においては,慎重な経過観察が必要であると考えられた.
【結語】
USにおける嚢胞内腫瘤像は多彩であり,良悪性の鑑別には年齢,局在,腫瘤径を考慮し,嚢胞内部の充実部分を注意深く観察することが重要である.経時変化を示す症例においては,慎重な経過観察が必要である.また,US動画記録による再評価は嚢胞性病変の壁外浸潤の診断に有用であった.