Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
胎児異常

(S759)

胎児完全房室ブロックの2例

Two cases of congenital atrioventricular block

三浦 清徳1, 河野 通晴1, 東島 愛1, 吉田 敦1, 増﨑 雅子1, 本村 秀樹4, 上妻 友隆3, 前野 泰樹2, 増﨑 英明1

Kiyonori MIURA1, Michiharu KOHNO1, Ai HIGASHIJIMA1, Atsushi YOSHIDA1, Masako MASUZAKI1, Hideki MOTOMURA4, Tomotaka KOHZUMA3, Yasuki MAENO2, Hideaki MASUZAKI1

1長崎大学医学部産婦人科, 2久留米大学医学部小児科, 3久留米大学医学部産婦人科, 4長崎大学医学部小児科

1obstetrics and gynecology, Nagasaki University school of medicine, 2Pediatrics, Kurume University school of medicine, 3Obstetrics and Gynecology, Kurume University school of medicine, 4Pediatrics, Nagasaki University school of medicine

キーワード :

胎児心拍数80bpm未満の高度徐脈の多くが先天性完全房室ブロックで,その発症頻度は1/11,000-20,000と報告されている.今回,胎児完全房室ブロックの2例を経験したので報告する.
症例1.母親は33歳の初産婦で,妊娠前より抗SS-A抗体,抗SS-B抗体および抗核抗体が陽性でシェーグレン症候群と診断され,プレドニン8mg/日を内服していた.近医で妊娠管理され経過は順調であったが,妊娠19週4日の妊婦検診で胎児徐脈を指摘され,精査管理の目的で長崎大学を紹介された.妊娠20週4日の胎児超音波検査で軽度の胎児水腫を認めたが,その他の形態異常は認められなかった.ドプラ法で右心房から上大静脈への逆流波を心房収縮,右心室から上行大動脈に向かう血流波形を心室収縮として同時に記録した.胎児の心房収縮と心室収縮とが独立し,心室収縮の調律は61bpmで胎児完全房室ブロックと診断された.出生後の児へのペースメーカー植え込みが可能な久留米大学と連携し,長崎大学で胎児治療として,母体へのリトドリン100μg/分およびデカドロン4mg/日の投与を開始した.胎児心不全の増悪は認められず,胎児発育も妊娠週数相当に良好であった.妊娠31週4日,娩出後の新生児治療を行う久留米大学へ母体搬送した.引き続き,胎児水腫の増悪と胎児発育の有無を評価して妊娠管理され,児は妊娠37週4日に選択的帝王切開で娩出した.児は4生日にペースメーカーを挿入され,経過順調であった.
症例2.母親は34歳の初産婦で,近医で妊娠管理され経過は順調であった.妊娠19週3日の妊婦検診で胎児徐脈を指摘され,精査管理の目的で長崎大学を紹介された.胎児超音波検査で胎児腹水を認め,Mモード法で胎児の心房壁と心室壁の動きを同時に描出し,心房収縮と心室収縮が完全に独立し,心室の調律は58bpmであったので,胎児完全房室ブロックと診断された.胎児心臓の形態異常は認められなかった.母体の血液検査で抗SS-A抗体および抗核抗体が陽性であった.膠原病内科で精査され,シェーグレン症候群と診断された.久留米大学と連携し,長崎大学で胎児治療として,妊娠20週4日より,母体へのリトドリン200μg/分およびデカドロン4mg/日の投与を開始した.胎児腹水は消失し,胎児発育不全ではあるが胎児発育は認められていた.妊娠27週2日の超音波検査で胎児心嚢水の増加と胎盤の浮腫像を認めたため,娩出後の新生児治療を行う久留米大学へ母体搬送した.引き続き,胎児水腫の増悪と胎児発育の有無を評価して妊娠管理され,妊娠36週2日に胎児胸水の増悪と胎児well-beingの低下を認め,緊急帝王切開で娩出された.児は出生直後にペースメーカーを挿入されたが,循環不全のため17生日で永眠した.
以上より,胎児完全房室ブロックの周産期管理では,胎児超音波検査による心拡大や胎児水腫の有無の評価が重要であった.また,自施設で新生児へのペースメーカ植え込み術が不可能な場合には実施可能な施設との連携が大切であった.