Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
胎児異常

(S758)

胎児超音波検査で診断できた外性器形態異常の一例

A Case of form abnormality of the genital organs that is detected in fetal ultrasonographic screening

小池 奈月1, 成瀬 勝彦1, 赤坂 珠理晃1, 重富 洋志1, 常見 泰平1, 大井 豪一1, 小林 浩1, 佐道 俊幸2

Natsuki KOIKE1, Katsuhiko NARUSE1, Jyuria AKASAKA1, Hiroshi SHIGETOMI1, Taihei TSUNEMI1, Hidekazu OOI1, Hiroshi KOBAYASHI1, Toshiyuki SADOU2

1奈良県立医科大学附属病院産婦人科, 2大阪暁明館病院産婦人科

1Obstetrics and Gynecology, Nara Medical University, 2Obstetrics and Gynecology, Osaka Gyoumeikan Hospital

キーワード :

【緒言】
胎児超音波検査で外性器に形態異常を認める代表的な疾患として尿道下裂がある.男児出生の300〜1000人に1人の発生率と言われており,約9%に停留精巣,鼠径ヘルニアを合併する.頻度は少ないが心疾患や鎖肛,その他の腎尿路異常等の先天奇形を合併することがある.外性器の形態だけでは性別の決定に苦慮することが多く,性染色体検査により確定診断する必要がある.今回,胎児超音波検査で外性器形態異常を認め,出生後に尿道下裂,鎖肛,鼠径ヘルニアと診断された男児の症例を経験したので報告する.
【症例】
症例は33歳女性.2回経妊1回経産.第1子に先天奇形はなく,泌尿器系異常の家族歴はない.hMG-hCG療法により妊娠成立した.他院で妊婦健診を受けており,帰省分娩目的で当院に紹介受診となった.前医で単一臍帯動脈を指摘されていた.妊娠34週5日に当科初診となり,胎児超音波検査では推定体重1879g(-1.51SD),単一臍帯動脈を認めた.左腎欠損もしくは低形成が疑われた.外性器の所見は,陰茎は不明瞭で陰嚢と陰唇様の構造を同時に認め,性別の判定が困難であった.精巣を陰嚢内に確認でき,陰嚢水腫は認めなかった.膀胱は正常,その他の異常所見は認めなかった.羊水量は正常範囲であった.
妊娠39週2日,自然経腟分娩で2434g(-1.7SD),Apgarスコア8点(1分)10点(5分)の児を出生した.新生児の外表所見は副耳,顔面ポリープを認めた.口唇口蓋裂はなく,四肢形態に異常はなかった.会陰に肛門の開口,瘻孔形成はなく,二分陰嚢の間に尿道口を認め,鎖肛,陰嚢開口型の高度尿道下裂と診断した.両側陰嚢内に精巣を触知した.出生時に行った血液検査では電解質,17-Hydroxyprogesteroneは正常値であった.新生児心臓超音波検査所見は,三尖弁の逆流を軽微に認める以外に異常所見はなかった.腹部超音波検査では右腎に異常なく,左腎は右腎と接して腹部正中に存在する左交叉性腎転位であった.左尿管は著明に拡張しており膀胱の尾側に異所性開口し,左水腎症を認めた.胃,膀胱や脊椎の形態に異常所見はなかった.MRIで詳細な内臓形態の精査を行ったが,超音波検査結果以外の異常所見を認めなかった.陰嚢部の尿道口から尿路造影検査を行い直腸は造影されなかったが,カテーテル先端に胎便の付着を認めたため直腸尿道瘻が疑われた.
鎖肛に対し日齢1に人工肛門造設術を施行した.性染色体検査の結果を待つ間に泌尿器科医より男児,女児として療育する場合の方針について家族に説明が行われた.新生児の染色体検査G-bandは正常男性核型であり,FISH法でY染色体の異数性を認めなかった.生後4カ月で行った内分泌検査では特記すべき異常はなかった.左水腎症がやや顕在化しているが排尿障害はなく,腎機能と腎形態を現在経過観察中である.
【結論】
胎児超音波検査による形態評価のみで疾患の確定診断を行うことは困難であるが,母児にとって低侵襲であり,出生前から家族に考えうる疾患の管理方針について情報提供できることは有意義であると考えられる.