Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
産科(その他)

(S755)

経腟分娩後の産褥1ヶ月健診時に経腟超音波検査で診断された子宮不完全破裂の1例

Incomplete uterine rapture diagnosed by ultrasonography after transvaginal delivery

太田 創, 岡田 義之, 大森 明澄, 小田 力

Hajime OTA, Yoshiyuki OKADA, Azumi OMORI, Chikara ODA

秦野赤十字病院産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Hadano Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
子宮破裂は1000〜20000分娩に1例と報告されているが,瘢痕部がない子宮の生じた無症候性の不完全な外傷性子宮破裂とその超音波検査所見の報告は少ない.
【症例報告】
症例は33歳,1経妊1回人工妊娠中絶(8週)の既往がある自然妊娠の初産婦で,妊娠初期から当院で妊婦健診を受診していた.妊娠経過は順調だった.妊娠40週0日に前期破水の診断で入院した.自然に陣痛発来した後は急速に分娩が進行して,分娩第Ⅰ期は1時間40分だった.分娩第Ⅱ期が3時間経過した時点で,微弱陣痛と児頭回旋異常と診断されオキシトシン点滴静注で陣痛促進を開始した.遷延性一過性徐脈から基線細変動の現象を伴う変動性一過性徐脈と遷延性一過性徐脈を認め,異常波形レベル4の胎児機能不全と診断した.産瘤が著明で大泉門が1時方向に触知する前方頭頂位だったが,鉗子適位の低在から鉗子分娩を施行し1回の牽引で娩出した.3405gの女児でアプガールスコアは8/9点(1分値/5分値)だった.出血量は682gで,産褥3日目のヘモグロビン値は10.9g/dlだった.産褥1日目と5日目の診察では異常を認めず退院した.産褥1ヶ月健診の経腟超音波検査で子宮体下部筋層の前後壁に楔形の欠損像を認め,残存筋層の厚さは前壁2.9mmで後壁が4.9mmだった.カラードプラ法では筋層欠損部には血流を認めなかった.MRI検査でも同部位に楔形の筋層断裂像を認めたが,漿膜に達する損傷は認めなかった.
【考察】
本症例の不完全子宮破裂の原因として,人工妊娠中絶の既往,急速な分娩進行,児頭回旋異常を伴う分娩第Ⅱ期遷延,オキシトシン点滴静注,鉗子分娩を考えたが,それぞれがどの程度関与したかを判断することは困難だった.しかし,異常な分娩経過や器械分娩後の産褥1ヶ月健診では,症状がなくても経腟超音波検査で子宮筋層を評価しておくことが次回の妊娠に備えるためにも重要であると考えられた.