Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
産科(その他)

(S754)

前置胎盤症例の分娩時大量出血とそのリスク因子についての後方視的検討

Risk factors of placenta previa for obstetric hemorrhage

山本 恵理子, 田嶋 敦, 松丸 葉月, 中嶋 友美, 野上 直子, 野島 美知夫, 吉田 幸洋

Eriko YAMAMOTO, Atsushi TAJIMA, Haduki MATSUMARU, Tomomi NAKAJIMA, Naoko NOGAMI, Michio NOJIMA, Koyo YOSHIDA

順天堂大学医学部附属順天堂浦安病院産婦人科

Obstetrics and gynaecology, Juntendo Unibersity Urayasu Hospital

キーワード :

【目的・対象】
近年生殖補助医療の普及や高齢妊娠の増加に伴い,前置胎盤は増加傾向にある.前置胎盤では全例帝王切開術による分娩となり,分娩時大量出血を起こしやすいことで知られている.大量出血を起こした場合大量輸血は不可避であり,母体の生命に危険が及ぶこともある.また,警告出血があれば早産で十分な輸血の準備ができずに緊急帝王切開術となることもあり,母児ともにリスクの高い妊娠である.しかしながら必ずしも分娩時大量出血となるわけではなく,輸血を回避できる症例も多い.帝王切開術前に分娩時大量出血のリスク評価を行うことができれば,より安全な分娩を行うことができる.分娩時出血の大半は子宮頸部における胎盤剥離面からの出血であることから,胎盤付着部位や子宮頸管長などの子宮頸部所見に着目し,新たなリスク評価の指標となりうるか当院で帝王切開術を行った前置胎盤40例について後方視的に検討した.
【結果】
前置胎盤40例中,帝王切開術中および術後出血合わせて分娩時出血が2500g以上となった症例17例について検討を行った.オッズ比は,胎盤前壁付着12.00,全前置胎盤4.27,警告出血2.00,緊急帝王切開が行われた症例1.11,既往帝王切開後妊娠4.71,前置胎盤診断時(妊娠27週-32週)および帝王切開時のいずれかで子宮頸管長が25mm以下の短縮を認めた症例で9.16であった.帝王切開時/前置胎盤診断時の子宮頸管長比が<0.8となった症例はすべて分娩時出血量が2500g以上であり,17例中6例であった.<0.7となった症例は2例のみであり,この2例は病理組織学的に癒着胎盤と診断された.子宮頸管長が20mm以下に短縮した4例でもうち2例がこの癒着胎盤であった.残りの2例では妊娠中期の警告出血で前置胎盤と診断され,すでに子宮頸管長短縮を認めていた.オッズ比の高かったリスク因子について再検討を行ったところ,子宮頸管長の短縮をはじめとする単独のリスク因子では分娩時出血量に有意差は認めなかったが,複数のリスク因子をもつ症例では有意差をもって分娩時出血量は増加した.
【考察】
全前置胎盤や既往帝切後妊娠など前置胎盤の分娩時大量出血のリスク因子はこれまでにもいくつか言われており,複数のリスク因子を有している症例ほど分娩時大量出血のリスクが高いという結果が得られた.今回新たに,子宮頸管長が25mm以下に短縮する症例や前置胎盤診断時に比べ帝王切開時の頸管長が大きく短縮する症例では,より深い位置での内子宮口への胎盤付着となると考えられ,分娩時大量出血となるリスクが高いことが示唆された.