Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 消化器
消化管2・その他

(S747)

超音波が有用であった小腸間膜神経鞘腫の一例

A rare case of small bowel mesenteric Schwannoma detected by ultrasonography

本間 明子1, 山口 梨沙1, 関 春菜1, 松田 聡子1, 藤沢 一哉1, 志賀 淳治2, 石田 秀明3, 渡部 多佳子3, 大山 葉子4, 長沼 裕子5

Akiko HONMA1, Risa YAMAGUCHI1, Haruna SEKI1, Satoko MATSUDA1, Kazuya FUJISAWA1, Junji SHIGA2, Hideaki ISHIDA3, Takako WATANABE3, Youko OHYAMA4, Hiroko NAGANUMA5

1上尾中央医科グループ津田沼中央総合病院検査科, 2津田沼中央総合病院病理センター, 3秋田赤十字病院超音波センター, 4秋田組合総合病院臨床検査科, 5市立横手病院消化器科

1Department of Clinical Laboratory, Tsudanuma Central General Hospital, 2Department of Pathology, Tsudanuma Central General Hospital, 3Depart of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 4Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 5Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
画像診断の普及により軟部組織由来の神経鞘腫例の報告は増加し,その超音波所見は良く知られるようになった.しかし腹腔内に発生した神経鞘腫はまれで,特に小腸間膜由来のものは極めてまれである.今回,我々はその一例を経験したので超音波所見を中心に報告する.なおvolume data収得のための3Dプローブは機械式のものである.
【超音波診断装置】
超音波診断装置:東芝社製-アプリオXG(中心周波数:3-4MHz)
【症例】
87歳女性,既往歴は子宮筋腫,現病歴はC型肝炎,糖尿病,高血圧.血液データでは軽度腎機能障害を認め,CEA,CA19-9,CA-125の腫瘍マーカーは基準範囲内であった.
【腹部超音波検査】
肝s8に1.5cmの嚢胞と2cmの血管腫を認め,胆嚢に0.3〜0.8cmのポリープを3〜4ヶと,左腎に3〜6cmの嚢胞を3ヶ認めた.膵,脾に異常はなかったが,右腎下極に接して4.5×3.5cm大の表面平滑な円形腫瘤を認めた.腫瘤は右腎や下大静脈を軽度圧迫していたが境界は明瞭で,呼吸性移動を認め,浸潤も癒着もなしと判断した.腫瘤内部には多数の小無エコー域が不規則に分布していた.この特徴的な所見から神経系由来の腫瘤,特に神経鞘腫を強く疑ったがその由来臓器に関しては不明であった.なお病変部のvolume dataを基にしたmulti-C planeでも上記の超音波所見は基本的に同様で,どの断面でも小円形無エコー域が不規則に分布していた.
【CT】
円形平滑で内部構造は内部の無染域を多血辺縁が取り囲むものであった.
【MRI】
腫瘤内部はT2強調にて高信号,T1強調にて低信号を示し,境界明瞭,内部は多房性で隔壁に造影効果を認めた.腫瘤関連血管がflow-voidとして低信号に描出され小腸間膜由来が示唆された.
【経過】
これらの結果から腹腔鏡下で腫瘤摘出術が施行された.摘出した腫瘤の肉眼所見は,4.5×3.5×3.0cmの被膜に覆われた嚢胞状弾性軟の腫瘤であった.病理組織所見では,紡錘形ないし楕円形の大型の核を有する細胞を認め,免疫染色では,S-100陽性,c-kit陰性,CD34陰性であった.以上より小腸間膜原発の良性神経鞘腫と診断された.術後経過は順調で入院10日目に退院.その後の外来経過も順調である.
【まとめと考察】
極めてまれな小腸間膜由来の神経鞘腫の腹腔鏡下腫瘤摘出例を超音波所見を中心に報告した.この症例にみられたように神経鞘腫は発生部位を問わず,a)ほぼ球形で平滑な表面を有する腫瘤となること,b)腫瘤内部には多数の小無エコー域が不規則に分布していることがあげられ,この特徴的な所見から術前診断は十分可能と思われる.鑑別診断としては消化管由来のGISTやカルチノイド,デスモイド,リンパ性腫瘍が挙げられる.しかし,周囲に腫瘤と連続する消化管が無いことや,無エコー域が多数であること,などがGISTよりは神経鞘腫に当てはまる所見と思われるが,この点に関しては更に多数の症例の蓄積が必要である.超音波診断上示唆に富む小腸間膜由来の神経鞘腫例を報告した.