Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 消化器
胆道・膵

(S744)

胆嚢穿孔の2例:造影超音波の有用性を中心に

Contrast-enhanced sonographic findings of gallbladde fistula

大竹 千秋1, 古川 佳代子2, 石田 秀明3, 渡部 多佳子3, 大山 葉子4, 長沼 裕子5, 櫻庭 里美6, 山本 裕子1, 海老沢 真知子1

Chiaki OOTAKE1, Kayoko FURUKAWA2, Hideaki ISHIDA3, Takako WATANABE3, Youko OOYAMA4, Hiroko NAGANUMA5, Satomi SAKURABA6, Yuuko YAMAMOTO1, Machiko EBISAWA1

1海老名総合病院臨床検査科, 2海老名総合病院消化器内科, 3秋田赤十字病院超音波センター, 4秋田組合総合病院臨床検査科, 5横手市立病院内科, 6能代山本医師会病院臨床検査科

1Clinical laboratory Department, Ebina General Hpspital, 2Department of Gastrointestinal medicine, Ebina General Hpspital, 3Ultrasonic Center, Akita Red Cross Hospital, 4Clinical laboratory Department, Akita Kumiai General Hospital, 5Internal Department, Yokote Municipal Hospital, 6Clinical laboratory Department, Noshiro Yamamoto Medical Association Hospital

キーワード :

【はじめに】
我々は過去の本学会で胆嚢底部の穿孔の診断に造影超音波法が有用である事を報告したところ,体部の穿孔に対する本法の有用性に関しても質疑がなされた.今回,我々はそれに対する回答になりえる2症例を経験したので造影超音波所見を中心に報告する.使用診断装置:
【症例1】
日立アロカ社Acendus,
【症例2】
日立アロカ社:α10.(周波数:3−4MHz).なお,造影超音波検査は通常の肝腫瘍のそれに順じ,ソナゾイド溶液(第一三共社)推奨容量の半量を肘静脈から注入し,MI値0.2前後で注入後10分まで観察した.
【症例1】
97歳男性.数日前から嘔気と嘔吐,食欲低下,ADL低下,排便なしにて外来受診,採上炎症反応高値,低アルブミン血症,肝機能障害,腎機能障害あり.腹部単純CTにて超音波上,胆嚢壁肥厚と内小腸イレウス,巨大肝腫瘤(腫瘍または膿瘍疑い)胆石が指摘された.Bモードエコー上も同様の所見.機械的イレウスの原因は指摘できず,腹腔内炎症による麻痺性イレウスとして,高齢のため抗生剤による保存的治療にて経過観察となった.
その後肝腫瘤の鑑別のため造影超音波施行.胆嚢腫大と内部に結石と胆泥貯留がみられ,胆嚢壁は一部壁肥厚と境界不整がみられた.S5を中心に巨大な肝腫瘤がみられたが胆管拡張や門脈の血流異常はみられず.肝腫瘤と胆嚢の関連はBモード上は不明であった.
造影超音波上,早期血管相から胆嚢壁全体が均一に濃染し胆嚢炎の所見であった.一方,S5腫瘤は早期血管相から病変周囲が均一に濃染し(hypervascular rim),病変中心の広範囲な無染域の存在から膿瘍の所見であった.さらに造影剤注入5分後から体部の胆嚢壁に小無染箇所と,S5病変がそれに連続する様が明瞭に認められ,胆嚢炎の肝内への穿孔と診断した.
その後も抗生剤による保存的治療にて炎症反応は改善傾向にある.
【症例2】
70歳代男性.数週間前から全身状態の悪化と発熱あり.採血上,CRP高値と軽度肝機能異常あり.超音波上,胆嚢壁肥厚と肝内(S5中心)に5cm大の境界不鮮明な低エコー腫瘤あり.胆管拡張や門脈血流の異常はなし.S5腫瘤と胆嚢の関連はBモード上不明であった.造影超音波上,早期血管相から胆嚢壁全体が均一に濃染し胆嚢炎の所見であった.一方,S5腫瘤は早期血管相から病変周が均一に濃染し((hypervascular rim),病変中心の広範囲な無染域の存在から膿瘍の所見であった.さらに,造影剤注入3分後から胆嚢壁(体部)に小無染箇所と,S5病変がそれに連続する様が明瞭に認められ,胆嚢炎の肝内への穿孔と診断した.超音波下に膿瘍(穿孔部)のドレナージ試行.なお穿孔箇所はCTでは描出不能であった.その後胃癌も認められ入院1月後永眠.
【まとめと考察】
今回の2症例では診断確立が患者診療上劇的な貢献はしなかったが造影超音波検査で胆嚢穿孔の小穿孔箇所が造影超音波で明瞭の表示されたことは注目に値する.穿孔の全体像を理解することはドレナージ手技を決めるのに重要でそれに造影超音波が有用である事が証明された症例であった.なお,肝内穿孔箇所は基本的には肝膿瘍と同一であり,造影超音波上も,早期血管相から病変周囲が均一に濃染し((hypervascular rim)と病変中心の広範囲な無染域が存在する,という膿瘍の造影所見であり,この所見のみで診断が可能になる.今後さらに,各種胆嚢疾患の造影超音波所見が報告されることで,胆道系の超音波診断能がされに向上するものと期待される.