Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 消化器
胆道・膵

(S744)

当院で経験した腫瘍径20mm以下(TS1)膵癌における体外式超音波所見の検討

Study of ultrasound findings in pancreatic cancer of less than 20 mm experienced in our hospital

吉田 直哉1, 長尾 康則1, 石原 茂秀1, 西脇 博1, 大澤 久志1, 加藤 統子1, 前野 直人1, 仲尾 洋宣1, 石川 英樹2

Naoya YOSHIDA1, Yasunori NAGAO1, Shigehide ISHIHARA1, Hiroshi NISHIWAKI1, Hisashi OOZAWA1, Noriko KATOU1, Naoto MAENO1, Hironobu NAKAO1, Hideki ISHIKAWA2

1公立学校共済組合東海中央病院医務局診療放射線科, 2公立学校共済組合東海中央病院消化器内視鏡センター

1Department of Radiology, Tokai Central Hospital, 2Department of Endscopy, Tokai Central Hospital

キーワード :

【はじめに】
当院で経験した,腫瘍径20mm以下の膵癌(以下TS1膵癌)9例について,体外式超音波(以下:US)画像所見,同一患者の造影CT所見,超音波内視鏡(以下:EUS)画像所見を比較し,若干の文献的考察を加えて検討したので報告する.
【対象および検討方法】
2009年9月から2013年2月までの期間に当院で経験した9例のTS1膵癌症例.
男性4人 女性5人 平均年齢75.8才.
対象におけるUS所見と,造影CT画像所見ならびにEUS所見との対比を検討した.
【結果】
USにて腫瘤を指摘できたものは55.6%(5/9),主膵管の拡張を指摘できたものは66.7%(6/9),腫瘤および膵管拡張の両方を確認できたものは33.3%(3/9)であった.造影CTにて腫瘤を指摘できたものは77.8%(7/9),主膵管の拡張を指摘できたものは77.8%(7/9),腫瘤および膵管拡張の両方を確認できたものは55.6%(5/9)であった.EUSでは9例全例において腫瘤を指摘した.腫瘤の解剖学的位置としては,膵頭部55.6%(5/9),膵体部44.4%(4/5),膵尾部0%であり,さらに膵頭部のうち40%(2/5)が鉤部であった.腫瘤の解剖学的位置におけるUSでの腫瘤描出率は,膵鉤部例で100%(2/2),膵鉤部を除いた膵頭部例で66.7%(2/3),膵体部例で25%(1/4)であった.
【考察】
日本膵臓学会の膵癌登録報告2007によると,腫瘍サイズ別の統計においてTS1膵癌は9.7%報告されている.近年,画像診断技術の向上は目覚ましいといえるが,早期膵癌の発見率については未だ高いとは言い難い.臨床症状や危険因子等より膵疾患を疑う場合,画像診断の第一選択は簡便かつ非侵襲的なUSであるが,膵腫瘤は解剖学的位置関係や被検者の体格により,USにおける描出能は変化する.さらにTS1膵癌となれば描出困難例も少なくない.USでTS1膵癌を拾い上げるには,腫瘤の描出だけでなく,主膵管拡張,嚢胞性病変などの間接所見を指摘する事が重要である.間接所見の指摘により造影CT等の精査へ進めることができ,さらにEUSを行うことで造影CTでも確認が困難な小膵癌も描出することが可能となり最終診断へ導くことができる.今回の症例においてUSの腫瘤描出率は55.6%であったが,主膵管拡張の有無を併せた有所見率としては88.9%であった.また,腫瘤および主膵管の拡張を指摘し得なかった1症例では,腫瘤近傍の嚢胞性病変を指摘し,造影CTによる精査により腫瘤を描出することができた.よってUSと造影CTを併せた有所見率としては100%となった.また,腫瘤描出率については造影CTが77.8%とUSより高く,USで腫瘤を描出した全例において造影CTでも描出された.解剖学的位置におけるUSでの腫瘤描出率について,今回の症例では膵体部で25%と他部位に比べ低い結果となった.膵体部は肝を音響窓として観察できる場合が多く,比較的観察しやすい位置であるが,腸管ガスや深部減衰の影響を受け描出困難であった可能性が考えられる.EUSにおける腫瘤描出率は100%であり,US,造影CTに比べ有意に腫瘍描出能が優れていると言える.また,今回の結果において,膵尾部でのTS1症例が0例であった.これは,膵尾部は解剖学的に腹痛や黄疸等の自覚症状に乏しい事や,USにて描出が難しい事から,検診などで指摘できなければ困難である場合が多いと考えられた.
【まとめ】
当院で経験した9例のTS1膵癌についてUSにおける所見と造影CT所見,EUS所見との比較,検討を行った.早期膵癌を発見するためにはUSによる直接,間接所見の拾い上げが有用であり,積極的に施行すべきである.