Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 消化器
胆道・膵

(S743)

胆管門脈瘻の一例

portibiliary fistula

鈴木 さとみ1, 小松田 智也1, 衛藤 武1, 宮内 孝治2, 長沼 裕子3, 大山 葉子4, 石田 秀明1

Satomi SUZUKI1, Tomoya KOMATUDA1, Takeshi ETOU1, Takaharu MIYAUCHI2, Hiroko NAGANUMA3, Youko OOYAMA4, Hideaki ISHIDA1

1秋田赤十字病院消化器科, 2秋田赤十字病院放射線科, 3市立横手病院内科, 4秋田組合総合病院臨床検査科

1Department of Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital, 2Department of radiology, Akita Red Cross Hospital, 3Internal medicine, Yokote Municipal Hospital, 4Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital

キーワード :

胆管門脈瘻(portibiliary fistula)は極めてまれな偶発症であり早期の診断が肝要である.今回我々はそのような一例を経験したので報告する.使用診断装置:東芝社製:AplioXG,500.超音波造影剤はソナゾイド(第一三共社)を用い,通常の乳腺腫瘍の(推奨)造影方法に準じた.
【症例】
70歳代女性.閉塞性黄疸の精査加療目的に当院紹介入院.入院時血液検査にてT-bil 5.4mg/dl,LDH 282IU/l,AST 187IU/l,ALT 331IU/lと肝胆道系酵素の上昇を認めた.超音波上,総胆管径10mmと拡張あり,下部胆管に2cm大の腫瘤を認め十二指腸乳頭部癌による閉塞性黄疸と診断された.減黄目的でERBDを試みたが施行できず,PTCDを施行し減黄が得られた.その後PTCDチューブ交換を試みたところ再挿入が困難であり,経乳頭的アプローチへ変更し7Fr.ENBDチューブを挿入した.乳頭部の病変は潰瘍を形成しており,同部からチューブを挿入し操作に難渋した.操作中,乳頭部から少量の持続する出血を認めた.出血は恒常的であったが拍動性はみられなかった.翌日ENBDチューブより血液が吸引されたため超音波検査を施行した.血管損傷も念頭に乳頭部近傍を観察すると,a)腹水や遊離ガスは認めなかった.b)胆管を介し門脈内にステントが数cm入り込んでいた.カラードプラ上(FFT波形上も)門脈血流は保たれており,血流はステント周囲をほとんど乱れなく求肝性に流れていた.造影超音波上も血栓形成等みられなかった.胆管門脈瘻と診断し,緊急PTCDを施行後,ENBDチューブ抜去,内視鏡的メタリックステント挿入術を施行した.その後,超音波で障害箇所中心に経過観察を行うも門脈血栓などはみられていない.現在腫瘍に対し外科的治療を検討している.
【まとめと考察】
胆管門脈瘻(portibiliary fistula)の多くは閉塞性黄疸に対するステント挿入中に生じる.本症例も過去の報告例とほぼ同様の状況で生じ,腫瘍が柔らかいためステントが不適正な方向に向かったものと思われる.一般的に出血は非拍動性で持続的である.これは損傷脈管が動脈ではなく門脈であるためで,胆管門脈瘻の出血の特徴であり本症例にも当てはまった.胆管門脈瘻は早期診断が重要であり,対処の遅延に伴い門脈血栓形成や感染が起こることが報告されている.治療は誤挿入されたステントを慎重に引き抜くのみで十分な事が多いが,念のため損傷部近傍を経過観察することが望まれる.過去の報告例では胆管門脈瘻の診断はCTでなされており超音波でなされた例は極めて僅かである.しかし,超音波の持つ機動力を考えると今後診断と経過観察はCTではなく超音波でなされるべきであろう.胆管門脈瘻は望ましいことではないが,減黄行為が日常的に施行される現在常に起きうる可能性がある.ステント挿入時に出血がみられた場合超音波で確認することが早期発見に貢献でき,本例がそのモデルになりうると考え報告する.