Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 消化器
肝臓4

(S740)

造影超音波を用いた進行肝細胞癌に対するソラフェニブの治療評価の検討

Evaluation of sorafenib for advanced hepatocellular carcinoma by contrast-enhanced ultrasonography

渡邉 学1, 塩澤 一恵2, 池原 孝1, 高亀 道生1, 金山 政洋1, 工藤 岳秀3, 丸山 憲一3, 牧野 博之2, 五十嵐 良典1, 住野 泰清1

Manabu WATANABE1, Kazue SHIOZAWA2, Takashi IKEHARA1, Michio KOGAME1, Masahiro KANAYAMA1, Takahide KUDO3, Kenichi MARUYAMA3, Hiroyuki MAKINO2, Yoshinori IGARASHI1, Yasukiyo SUMINO1

1東邦大学医療センター大森病院消化器内科, 2済生会横浜市東部病院消化器内科, 3東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部

1Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Internal Medicine, Toho University Medical Center, Omori Hospital, 2Division of Gastroenterology and Hepatology, Department of Internal Medicine, Saiseikai Yokohamashi Tobu Hospital, 3Department of Clinical Functional Physiology, Toho University Medical Center, Omori Hospital

キーワード :

【目的】
以前,われわれは非造影超音波(US)およびソナゾイド造影超音波(CEUS)を用いて進行肝細胞癌(ad-HCC)に対するソラフェニブ(So)治療前後の画像所見およびdynamic CT所見を比較することにより,USおよびCEUSにおける視覚的変化がSoの治療評価に応用できるかどうか検討した.その結果,CEUSにおける腫瘍内壊死の有無やMicro Flow Imaging(MFI)による血管構築の変化を検討することはSoの治療評価につながる可能性があることが示唆された(JDDW2013など).今回,CEUSで得られたSo治療前後の画像変化が生存期間に寄与するかどうか検討した.
【対象と方法】
2009年4月〜2013年7月までの間にSo治療を開始したad-HCC 94例のうち,治療前および治療2〜4週以内にCEUSによる画像解析ができた26例を対象とした.平均年齢69.3±6.9歳,全例男性,背景肝はHBV 2,HCV 16,アルコール7,その他1例,Child-Pugh分類A 21,B 5例.超音波診断装置は東芝社製AplioXG,3.75MHZコンベックスプローブを用い,評価を一定とするためCEUSで経過観察が可能な一結節を対象とし治療前,治療2〜4週以内に同一断面,同じ撮像条件で画像評価を行なった.CEUS後血管相においてRe-injection methodによりソナゾイド0.5ml再静注後,腫瘍内壊死の有無(+/-)およびMFIで得られた腫瘍内の血管構築所見を治療前後で比較した.再静注後腫瘍内部が再度染影された時点で腫瘍内に一部でも染影効果が認められない部位が新たに出現したものを壊死(+)とした.MFIによる血管構築所見については,視覚的に腫瘍内血管が細くなるまたは減少する(A群),腫瘍内血管が不変(B群),腫瘍内血管が太くなるまたは増加する(C群)に分類した.腫瘍内壊死(+)群と(-)群の2群間,MFI所見におけるA,B,C群の3群間を,Kaplan-Meire法を用いて各々の生存期間を比較検討した.生存期間についてはSo治療を開始した時点より算出し,P<0.05で統計学的有意差ありとした.なお本検討については病院倫理委員会の承認を得ている.
【結果】
全26例の平均So初回投与量は400±196mg/日,平均観察期間は398.5±341日,生存期間の中央値(MST)は265日.腫瘍内壊死(+)群8,(-)群18例,MSTは腫瘍内壊死(+)群201日,(-)群265日,p=0.44で統計学的有意差は認めなかった.MFI所見においてA群11,B群10,C群5例,MSTはA群436日,B群307日,C群86日であった.A群とB群(p=0.78),A群とC群(p=0.001),B群とC群(p=0.004),各2群間の比較においてC群で有意に生存期間が短縮していた.
【考察】
一般的にSoの治療効果の特性から壊死(+)は治療効果を表している可能性が高いと思われるが,本検討結果では生存期間への関与は認めなかった.
一方,MFIによる評価では,腫瘍内血管が太くなるまたは増加したC群において有意に生存期間の短縮を認めた.Soは血管新生阻害作用を有するため,治療経過により腫瘍内部の血管構築が変化する可能性が考えられるが,本検討結果からその変化は治療効果を反映する可能性が示唆された.

【結語】
少数例の検討ではあるが,MFIを用いた腫瘍内部の血管構築の視覚的評価はSoの治療評価に応用できる可能性が示唆された.