Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 消化器
肝臓3

(S738)

肝のう胞による肝内静脈-静脈短絡

Intrahepatic venousl-venous shunts secondary to liver cyst :report of 4 cases

山中 有美子1, 石田 秀明1, 小松田 智也1, 八木澤 仁1, 渡部 多佳子1, 宮内 孝治2, 長沼 裕子3, 大山 葉子4

Yumiko YAMANAKA1, Hideaki ISHIDA1, Tomoya KOMATSUDA1, Hitoshi YAGISAWA1, Takako WATANABE1, Takaharu MIYAUCHI2, Hiroko NAGANUMA3, Youko OOYAMA4

1秋田赤十字病院超音波センター, 2秋田赤十字病院放射線科, 3市立横手病院内科, 4秋田組合総合病院臨床検査科

1Department of Diagonistic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Radiology, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital, 4Departent of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital

キーワード :

肝内静脈-静脈(以下,V-V)短絡は比較的まれな所見であり,その多くは原発性Budd-Chiari症候群例にみられるものである.今回我々は,まれな肝のう胞によるV-V短絡の4例を経験したので,その超音波所見を中心に報告する.使用診断装置:東芝社製:AplioXG, 500.なお,超音波造影剤はソナゾイド(第一三共社)を用い,通常の,肝腫瘍の造影方法に準じた.
【(症例1:70歳代女性)右背部通を主訴に当院受診.腹部超音波で肝右葉に15X15cm大ののう胞あり.血液データ上軽度の炎症所見あり.肝機能は正常.抗生剤で症状や血液データは改善するもご本人の希望でのう胞ドレナージ試行.約1Lの排液あり.排液内に細菌やがん細胞はみられず.のう胞は一旦13X13cmまで縮小した.その後外来で経過観察中に,穿刺箇所とは異なる箇所S4に多数の小V-V短絡出現.カラードプラで短絡の分布を観察すると中肝静脈の分枝間の短絡であった.FFTで短絡内の血流をチェックするとどの箇所でも3相波が明瞭に認められた.以下の症例も基本的には症例1と同様の超音波所見であるので簡単に記述する.
【(症例2:70歳代女性)無症状.血液データは正常.S4に13X13cm大ののう胞あり.右-中肝静脈間の短絡であり血流方向は中-右静脈方向であった.短絡内FFT波形は3相波が明瞭に認められた.
(症例3:40歳代女性)無症状.血液データは正常.肝門部に18X17cm大ののう胞あり.これも,右-中肝静脈間の短絡であり血流方向は中-右静脈方向であった.短絡内FFT波形は3相波が明瞭に認められた.
【(症例4:70歳代女性)右背部通を主訴に当院受診.S4-S8中心に17X11cm大ののう胞あり.血液データ上軽度の肝機能異常あり.本人の希望でのう胞ドレナージ試行.これも,右-中肝静脈間の短絡であり血流方向は中-右静脈方向であった.短絡内FFT波形は3相波が明瞭に認められた.
【まとめと考察:肝内の3血管のうち流出血管は肝静脈のみで,流出障害が生じた場合その箇所を避けてV-V短絡が形成されその迂回路を通って血流は肝外に流出する.その原因としては報告例の大半が肝部下大静脈の閉塞や高度狭窄例であり,少数ではあるが,オスラー病があり,肝のう胞に起因するものは極めてわずかである.注目すべきはFFT所見であり,V-V短絡部内に3相波がみられたことである.これは心拍動の影響(圧変動)が短絡部まで及んでいることを示し,のう胞の圧迫が軽度であること,つまり,軽度の圧迫でV-V短絡は形成されうることを示している.しかし,臨床的に,極めて日常的な疾患である肝のう胞周囲にV-V短絡を見ることはまれであり,さらに何かの要因が加わらなくてはいけないものと思われる.それを解明するためには,今後この様な症例の蓄積が必要と考え報告する.