Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 消化器
肝臓3

(S737)

肝硬変に伴う肝内門脈-静脈短絡例の検討

Porta-venous shunt in liver cirrhosis patients

三浦 絵里花1, 藤谷 富美子1, 小野 久美子1, 金子 優1, 菊地 孝哉1, 遠藤 正志1, 伊藤 恵子2, 大山 葉子3, 長沼 裕子4, 石田 秀明5

Erika MIURA1, Tomiko FUJIYA1, Kumiko ONO1, Yuu KANEKO1, Takaya KIKUCHI1, Tadashi ENDOU1, Keiko ITOU2, Youko OOYAMA3, Hiroko NAGANUMA4, Hideaki ISHIDA5

1由利組合総合病院臨床検査科, 2仙北組合総合病院臨床検査科, 3秋田組合総合病院臨床検査科, 4市立横手病院内科, 5秋田赤十字病院超音波センター

1Clinical Laboratory, Yuri Kumiai General Hospital, 2Clinical Laboratory, Senboku Kumiai General Hospital, 3Clinical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 4Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital, 5Ultrasound Center, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
我々は過去の日本超音波医学会学術集会で,70例の肝内門脈-静脈短絡(macroscopic portal-venous shunt:以下PVS)例に関し,その成因や臨床像,を報告してきた.今回PVS例が95例まで増加したところその中に5例の肝硬変例が含まれていた.そこで今回は肝硬変とPVSの関連について検討し若干の知見を得たので報告する.使用装置:日立アロカ社製:alpha-10,東芝社製:AplioXG, 500,GE:Logiq E9,日立アロカ社:Ascendus, Preilus.超音波造影剤:Sonazoid(第一三共社).なお造影手順は通常の肝腫瘍のそれに準じた.
【対象と方法】
95例のPVS中肝硬変例5例に関し,短絡箇所,個数,他の短絡の合併の有無,肝硬変の成因,について検討した.
【結果】
a)症例は63−85歳(平均78歳)男性3例,女性2例で,肝硬変の成因は,C型2例,多飲2例,原因不明1例,であった.b)短絡箇所は全例1箇所で,P4-MHV2例,P4-LHV1例,P3-LHV1例,P6-RHV1例,であり主にP4に関わっていた.c)1例にHCCの合併(C型80歳代女性)がみられた.d)他の短絡は合併していなかった.また門脈血栓などもみられなかった.
【まとめと考察】
以前70例の肝内門脈-静脈短絡(PVS)例に関し,a)原因不明例が多数を占めること,b)短絡箇所は一箇所のものが多いこと,c)HHT(Osler-Rendu-weber病)では短絡箇所が多数で,かつ,他の短絡(動脈-門脈,動脈-静脈,静脈-静脈,など)を並存すること,d)短絡箇所としてはS3やS6辺縁が多数を占めること,を報告してきた.更に,最近では,少数例ではあるが,心疾患(右心不全)例ではS1などにみられ短絡箇所が原疾患により異なる可能性も挙げてきた.その際問題点として慢性肝疾患(特に肝硬変)例におけるPVS症例が極めて少数で検討困難である事が感じられた.以前はPVSの原因として肝硬変が挙げられ,その出現機序として,門脈圧亢進に伴う肝内循環動態の変化,肝組織壊死に伴う門脈と静脈の交通路の形成,などが列挙されてきたが,今回の検討例の頻度からみても,実際には以前考えられたほど高頻度ではないと思われる.これは以前は肝疾患例に関しては頻回に肝生検がなされたためではないか,と考えられる.今回の検討で,肝硬変例では,P4にからむPVSが多かった.肝左葉内側区(S4)は肝硬変の成因に関係なく萎縮すること,胆嚢静脈が還流している区域であり,肝硬変例におけるS4の振る舞いは注目されているが今回検討されたPVSの発生もこれらと関連していることも考えられ注目に値する.更に症例数を増やし検討を続けたい.