Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 消化器
消化管1

(S735)

腹部超音波検査にて指摘された胃十二指腸潰瘍の画像所見についての検討

Examination about the image evidence of gastric and duodenal ulcer pointed out by abdominal ultrasonography

福島 豊, 中野 勝行

Yutaka FUKUSHIMA, Katsuyuki NAKANO

東神戸病院放射線科

Department of Radiology, Higashikobe Hospital

キーワード :

【はじめに】
消化性潰瘍は心窩部痛などを主訴に受診し,内視鏡検査にて診断されることが一般的である.当院では,消化性潰瘍が疑われる場合でも,実質臓器の疾患やその他の消化管疾患の鑑別のため内視鏡検査に先駆けて腹部超音波検査(以下US)が行われ,胃十二指腸潰瘍が指摘されることも少なくない.USでは,潰瘍や周囲の壁肥厚,層構造の状態などの観察が可能であり,さらに浸襲性も低いため診断の過程において非常に有用な検査であると考えられる.
今回,心窩部痛を主訴に受診しUSを行った症例のうち,胃十二指腸潰瘍疑いにて即日上部内視鏡検査が行われ,上記と診断された症例について画像所見の検討を行ったので報告する.
【対象・方法】
2012年10月から2013年12月までの間に,心窩部痛などを主訴に受診しUSにて消化性潰瘍が疑われ,即日の内視鏡検査および経過により確定診断が得られた,急性胃潰瘍8例(A1 stage:6例,A2 stage:2例)と十二指腸潰瘍2例(A1 stage:1例,A2 stage:1例)の計10例を対象とした.
日本超音波医学会消化管診断基準委員会より推奨されている消化性潰瘍の特徴的なUS画像所見をもとに,
①粘膜〜粘膜下層を主体とした低エコーレベルの限局性壁肥厚(境界は不明瞭)
②中心部の壁構造の欠損
③潰瘍底の白苔部を示唆する高エコー像
④肥厚した壁内の線状ないし,くさび状の高エコー像
⑤壁に硬さがない
以上5項目について検討した.
【結果】
粘膜から粘膜下層を主体とした低エコーレベルの限局性壁肥厚は,10症例中10例すべてで認められた.中心部の壁構造の欠損は10症例中4例,潰瘍底の白苔部を示唆する高エコー像は10症例中9例,肥厚した壁内の線状ないし,くさび状の高エコー像は10症例中6例,壁に硬さがないについては10症例中4例に認められた.また,10症例中3例で飲水による観察を行っており,この3例については合致した画像所見が平均4.3項目,飲水による観察を行わなかった症例の合致は平均3.0項目であった.
【考察】
今回経験した症例では,粘膜から粘膜下層を主体とした低エコーの限局性壁肥厚や潰瘍底の白苔を示唆する高エコー像が,ほぼすべてに認められた.これは,潰瘍底の存在とその周囲のむくみが表現されていると考えられ,胃十二指腸潰瘍に特徴的な所見であると考えられた.しかし,中心部の壁構造の欠損・肥厚した壁内の高エコー像・壁の硬さがないについて観察できた症例は少なかった.この原因として潰瘍底の大きさや深さ,周囲の肥厚の程度にも左右されるが,層構造の状態などを詳細に観察できるような適切な音響窓がとれなかったことによるものと考えられた.また,硬さの表現については主観的判断によることや,さらに内容物がなく蠕動が起こりにくい状態では,硬さの判断が難しくなることによるものと考えられた.
飲水による観察を行った症例は,行わなかった症例よりも合致した項目の平均が多く,上記の観察困難であった項目についても,より詳細な評価が可能であると考えられた.
【まとめ】
今回,USにて胃十二指腸潰瘍を指摘した症例について,その画像所見について検討した.
胃十二指腸潰瘍が疑われる症例では臨床症状などを考慮し,積極的に飲水による観察を行うことで,より詳細な病態の性状を捉えることができると考えられた.