Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 消化器
肝臓2

(S734)

高齢者の原発性肝細胞癌例の検討

Incidently detected HCC lesion among aged patients :clinical aspects & role of US

藤谷 富美子1, 三浦 絵里花1, 小野 久美子1, 金子 優1, 菊地 孝哉1, 遠藤 正志1, 杉田 暁大1, 大山 葉子2, 長沼 裕子3, 石田 秀明4

Tomiko FUJIYA1, Erika MIURA1, Kumiko ONO1, Yuu KANEKO1, Takaya KIKUCHI1, Tadashi ENDOU1, Akihiro SUGITA1, Youko OOYAMA2, Hiroko NAGANUMA3, Hideaki ISHIDA4

1由利組合総合病院臨床検査科, 2秋田組合総合病院臨床検査科, 3市立横手病院内科, 4秋田赤十字病院超音波センター

1Clinical Laboratory, Yuri Kumiai General Hospital, 2Clinical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 3Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital, 4Ultrasound Examination Center, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
日常臨床の場で高齢者に対しても,慢性肝疾患例を超音波で経過観察することがルーチン化し,RFAの対象となる小肝細胞癌(HCC)が多数検出されるようになっている.しかし一方で,この治療対象HCC例とは別に,何らかの理由で施行された画像診断で,病変が偶然発見されるHCC(以下,出会いがしらHCC)例も存在することも事実である.この出会いがしらHCCの実態を把握する目的で,我々は以下の方法で高齢者(今回は便宜上80歳以上とした)のHCCを検討し若干の知見を得たので,それらに対する超音波検査の臨床的意義を中心に報告する.
【対象と方法】
過去2年間に当院と関連施設で経験した80歳以上の初発HCC例に関し,a)原因,b)腫瘍径(3cm以上,以下,に大別)と占拠区域,出会いがしらHCCの頻度,c)転移の有無,d)臨床症状,e)超音波検査(特に造影超音波検査)所見,についてretrospectiveに検討した.使用診断装置は,東芝社製:AplioXG,500,GE社製:LogiqE9,日立アロカ社製:Ascendus,Preilus.超音波造影剤は,ソナゾイド(第一三共社)を用い,通常の肝腫瘍の造影方法に準じた.
【結果】
17例の初発HCCがあり,年齢は80-93歳(平均84.4歳.男性8例,女性9例).a)原因はHCV9例(53%)(肝硬変7例),アルコール性肝硬変1例(6%),自己免疫性肝炎1例(6%),原因不明6例(35%)であった.画像診断上,肝硬変非合併例は5例であった.b)腫瘍径は3cm以下5例(29%),3cm以上12例(71%)で,占拠区域(主)は,S8:6例(35%),S5:3例(18%),S4:1例(6%),右葉全体3例(18%),多発例が4例(23%)であった.腫瘍径3cm以下の5例中4例はC型肝硬変で外来通院例であった.この4例と多発の1例(5/17:29%)が慢性肝疾患経過観察中のHCC発症例であり,それ以外(12/17:71%)が出会いがしらHCCであった.出会いがしらHCC12例中5例がHCV,原因不明が6例であった.c)転移の有無は右副腎転移1例(6%),肺転移1例(6%),リンパ節転移1例(6%)で,14例(82%)では肝外転移を認めなかった.d)臨床症状は腫瘍破裂の1例(6%)を除く16例(94%)で,腹部膨満感など比較的軽微なものであった.e)検査所見は全例においてBモードで腫瘍の検出が可能であり,造影超音波所見は典型的なHCCの像を呈し性状診断に苦慮することは無かった.なお4例(24%)では腎機能障害のため造影CT施行不能であり,単純CTのみでは病変が淡いlow density areaとしてのみ表現された.
【まとめと考察】
健康や医療に対する考えは時代と共に変化し,近年では職場健診の徹底など疾患の早期発見システムも急速に普及した.このことは,逆に,高齢者の多くは適切な時期に肝炎ウイルスチェックを受ける機会が無かったと考えられる.この様な時代的な背景が,今回の出会いがしらHCC例にはHCV指摘例が5例,と多い結果になったと思われる.しかし,それ以上に注目すべきは,出会いがしらHCC例では原因不明が6例とさらに多く,今後このHCC発生機序の解明が待たれる.症状も軽微例が多数(94%)を占めていることも特徴である.病変は全例において,超音波検査で容易に検出可能であったが,71%と多数で腫瘍径がすでに大きくRFA治療適応外例であった.このことは今後高齢者を対象に(最も浸襲や負担の少ない),超音波検査をある間隔で施行することも意味があると思われる.また,高齢者では腎機能が悪く造影CTが出来ない場合も想定され,検査手順としては,超音波検査(Bモード)+造影超音波検査の組み合わせが最も現実的と思われる.