Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 循環器
循環器3

(S726)

術前化学療法を受ける乳癌患者における左室機能とリンパ球数の変化

Effect of trastuzumab on the changes in left ventricular function and leukocyte counts in patients with breast cancer

寺西 ふみ子1, 細井 亮二1, 駒 美佳子1, 浅岡 伸光1, 森本 卓2, 星田 四朗3

Fumiko TERANISHI1, Ryoji HOSOI1, Mikako KOMA1, Nobuaki ASAOKA1, Takashi MORIMOTO2, Shiro HOSHIDA3

1八尾市立病院中央検査部超音波検査室, 2八尾市立病院乳腺外科, 3八尾市立病院内科

1Central Clinical Laboratory, Yao Municipal Hospital, 2Breast Surgery, Yao Municipal Hospital, 3Internal Medicine, Yao Municipal Hospital

キーワード :

【背景】
担癌患者において化学療法中に左室機能低下に伴う心不全を発症する例が報告されている.ハーセプチンはその代表的薬剤であるが,投与時の心機能諸指標と血液検査値との関連を検討した報告は少ない.
【方法】
術前化学療法を受ける乳癌35例(平均55±10歳)において,化学療法前と6か月後で心エコー法により得られた心機能諸指標(LVEF,%FS,E/A,DT,E‘,E/e’,左房容積(LAVI),左室拡張末期容積(LVEDVI),左室収縮末期容積(LVESVI),左室心筋重量係数(LVMI),相対的壁厚(RWT)を対比し,血液検査(白血球数,ヘモグロビン,eGFR,血小板数,リンパ球数,ナトリウム,カリウム)結果との関連を検討するとともにハーセプチンの影響について検証した.
【結果】
化学療法後には,左室拡張末期容積(LVEDVI:化学療法前57.5±9.2ml/m vs化学療法後60.1±8.9 ml/m,p=0.024)や左室収縮末期容積(LVESVI:化学療法前18.8±4.2 ml/m vs化学療法後20.6±4.4 ml/m,p=0.007)は有意に拡大し,左室駆出率(LVEF:化学療法前67.3±4.5%vs化学療法後65.5±4.6%,p=0.065)も低下傾向を示したが,心拍数・左室重量・左房容量・E/A・DT・E/e’には差は見られなかった.血液検査では,化学療法後に白血球数(化学療法前5926±1764/μl vs化学療法後5242±2098/μl,p=0.029)・リンパ球数(化学療法前1821±694/μl vs化学療法後1185±538/μl,p<0.001)・ヘモグロビン量(化学療法前13.5±1.1g/dl vs化学療法後11.3±1.25g/dl,p<0.001)が有意に低下した.LVEFの変化量は,化学療法前の左室拡張末期容積(LVESVI)と有意な相関を示し(r=0.350,p=0.039),左室拡張末期容積(LVESVI)の小さい例ほどLVEFはより低下したが,他のエコー指標との有意な関連はなかった.LVEFの変化量(ΔLVEF)はリンパ球数やヘモグロビン量の変動とは関係はなかった.ハーセプチン投与例(n=15)では左室拡張末期容積(LVEDVI:化学療法前56.5±10.5ml/m vs化学療法後61.9±9.0ml/m,p<0.001),左室収縮末期容量(LVESVI:化学療法前18.3±4.5ml/m vs化学療法後21.7±5.0ml/m,p=0.004)の有意な拡大とともにLVEF(化学療法前67.8±4.1%vs化学療法後65.0±5.4%,p=0.048)は有意に低下したが,ハーセプチン非投与例(n=20)では有意な変化は見られなかった.ハーセプチン投与例でのみLVEFの変化量(ΔLVEF)はリンパ球数の変化量と正相関(r=0.352)を認めた.
【考案】
乳癌患者において半年間の化学療法により左室容積は拡大し左室収縮力の低下が生じるが,左室収縮力の変化はハーセプチン投与例でのみ有意であった.左室収縮力の低下はリンパ球数の変化に関連する因子の影響を受ける可能性があるが,長期的な観察や他の修飾因子の検討が必要である.