Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 循環器
循環器3

(S725)

本邦におけるS字状中隔の発生頻度,病態の検討

Prevalence and Clinical Correlation of Sigmoid Shaped Interventricular Septum on Echocardiography in Japanese Population

佐藤 希美1, 瀬尾 由広2, 石津 智子2, 渥美 安紀子2, 山本 昌良2, 針村 佳江2, 町野 智子2, 川村 龍2, 悦喜 豊1, 青沼 和隆2

Kimi SATO1, Yoshihiro SEO2, Tomoko ISHIZU2, Akiko ATSUMI2, Masayoshi YAMAMOTO2, Yoshie HARIMURA2, Tomoko MACHINO2, Ryo KAWAMURA2, Yutaka EKI1, Kazutaka AONUMA2

1日立総合病院心臓内科, 2筑波大学循環器内科

1Department of Cardiology, Hitachi General Hospital, 2Cardiovascular Division, Faculty of Medicine, University of Tsukuba

キーワード :

【背景】
S字状中隔は,心室中隔と大動脈壁の角度が鋭角となり,心室中隔基部がS字状に左室流出路に突出する形態変化で,日常診療でしばしば散見される.加齢によって生じるとされ,欧米では60歳以上の3.5%と低い発生頻度の報告があるが,本邦における発生頻度,その機序については明らかではない.
【目的】
日本人におけるS字状中隔の発生頻度,病態についてエコー指標を用いて明らかにすること.
【対象・方法】
2013年12月に日立総合病院で施行された心エコー検査のうち,解析可能であった連続200例を対象とし,S字状中隔の有無に加え,S字状中隔を有する症例の心エコー所見の特徴を評価した.S字状中隔は,中隔壁と大動脈壁の角度(θ)<120°,基部心室中隔壁厚(A)≥1.4cm,基部中隔壁厚(A)/中部中隔壁厚(a)≥1.3のすべてを満たすものと定義した.
【結果】
対象となった200例は,16歳から91歳までの平均年齢67±14歳,男性が119例(58%)であった.そのうち75例(37%)でS字状中隔を認め,60歳以上に限ると150例中70例(46%)に認められた.S字状中隔を有する症例では,認めない症例と比較して有意に高齢(73±8 vs. 63±16歳;p<0.0001),低身長(158±9 vs. 161±9 cm; p=0.03),大動脈径(AoD)が高値(35±4 vs. 33±4 mm; p=0.02),左室駆出率(LVEF)高値(68±10 vs. 64±12%;p=0.008),左室拡張能が低下(E/A: 0.82±0.27 vs. 0.98±0.40; p=0.005,DCT: 234±58 vs. 214±58 msec; p=0.02)していた.AoD,LVEFはロジスティック回帰分析による多変量解析でも独立して有意な項目であった(AoD: Odds ratio, 0.85; 95%CI, 0.73 to 0.98; p=0.02,LVEF: Odds ratio, 0.95; 95%CI, 0.91 to 0.995; p=0.03).
また,S字状中隔の定義とした,θ,基部中隔と中部中隔の壁厚比(A/a)に影響する因子についても評価を行った.θは年齢,左室拡張末期容積(LVEDV),左室収縮末期容積(LVESV),E/A,DCTと有意な相関を認め,A/aは年齢,身長,LVEDV,LVESV,左房径(LAD),E/Aで有意な相関を認めた.多変量解析では,θの変化は年齢とのみ有意な相関を認め(p<0.0001),A/aは年齢(p=0.03),LAD(p=0.03)が独立して有意な因子であった.
【結論】
日本人におけるS字状中隔の発生頻度は比較的高率であり,その背景には大動脈形態・左室機能などが関与している可能性がある.