Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 循環器
症例報告3

(S722)

乾酪性僧帽弁輪石灰化腫瘤 3例報告

Caseous calcification of mitral annulus, 3 cases report

山田 朋幸, 松永 紘, 沼田 玄理, 玉置 徹, 小阪 明仁, 石原 有希子, 鴨井 祥郎, 斉藤 哲也, 田中 茂博

Tomoyuki YAMADA, Hiroshi MATSUNAGA, Genri NUMATA, Toru TAMAKI, Akihito KOSAKA, Akiko ISHIHARA, Yoshiro KAMOI, Tetsuya SAITO, Takahiro TANAKA

公立昭和病院循環器内科

Cardiology, General Showa Hospital

キーワード :

はじめに:乾酪性僧帽弁輪石灰化腫瘤(caseous calcification of mitral annulus=CCMA)は稀少疾患であるものの,僧帽弁輪石灰化(mitral annular calcification=MAC)と疾患概念を共にしており,臨床現場でもまれに遭遇しうる.我々は同疾患に遭遇し,当院生理学検査室において後ろ向き検討を行った.
対象:2012年1月30日から2013年3月31日に当院生理学検査室において経胸壁心臓超音波検査を行った同一症例を含む連続2,355例で後ろ向きに再検討を行った.CCMAは僧帽弁直下の高度石灰化を伴う内部がやや低エコーの腫瘤影で心周期に一致した軽度の運動を示すものとした.連続2,355例のうち,CCMAは3例(0.127%)に認められた.
症例1:77才男性 後尖直下30×27mm
持続性心房細動を伴う心原性脳梗塞の症例で,精査中に偶発見された.CCMAは経過観察の方針となった.無症候性内頚動脈高度狭窄を認めており,内膜剥離術を行ったが,血栓塞栓による合併症を認めなかった.リハビリ転院を経て,軽快退院ののち脳梗塞再発なく経過している.
症例2:85才女性 後尖直下30×22mm
発作性心房細動を伴うものの,脳血管動脈硬化性脳梗塞と診断された.抗血小板薬の内服継続により慢性期においても血栓塞栓症を認めなかった.
症例3:82才女性 後尖直下14×13mm
息切れ精査において偶発見された.経口抗凝固療法の内服が開始となり,現在血栓塞栓症なく経過している.
考察:心原性梗塞および心内血栓を指摘された症例は認めず,いずれも塞栓イベントを認めていない.形態学的易血栓性や心原性脳梗塞などから抗凝固療法としている報告もある.しかしながらCCMAに対する抗血栓療法というよりは,血栓塞栓リスクに対する治療が中心となる.高血圧症を有する高齢者にみられることが多く,脳梗塞発症後の精査中に発見される例もみられる.高齢化の進む現代においてはその有病率の増加も予想される.以前よりMACは脳梗塞や重症冠動脈病変との関連が指摘されており,硬化性変化の一環と考えられ,全身アテローム性疾患や加齢とともに有病率の増加する心房細動などの検索を積極的に行うことが重要と考えられた.
結語:CCMAは日常臨床で遭遇しうる疾患であり,高齢化の進む現代においてはその病態周知が肝要である.