Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 循環器
症例報告2

(S718)

Mid-ventricularたこつぼ心筋症の診断に心エコー図が有用であった1例

The Usefulness of Echocardiography for Diagnosing Mid-ventricular Takotsubo Cardiomyopathy

髙松 泉1, 河田 典子2, 金澤 聡2, 明比 一郎1

Izumi TAKAMATSU1, Noriko KAWATA2, Sou KANAZAWA2, Ichirou AKEHI1

1独立行政法人国立病院機構南岡山医療センター臨床検査科, 2独立行政法人国立病院機構南岡山医療センター呼吸器・アレルギー内科

1Department of Clinical Laboratory, National Hospital Organization Minami-Okayama Medical Center, 2Department of Allergy and Respiratory Medicine, National Hospital Organization Minami-Okayama Medical Center

キーワード :

【はじめに】
たこつぼ心筋症は,一般的に左室心尖部(apical)壁運動異常をきたすことが知られており,急性冠症候群(ACS)と類似の症状,形態を示すため,早期の鑑別診断が必要である.今回我々は,apicalでなく左室中部(mid-ventricular)の壁運動異常を呈するたこつぼ心筋症を,心エコー図のみの観察にてACSと鑑別し得た症例を経験したので報告する.
【症例】
40歳代,女性.
2013年5月SLE治療中,粟粒結核と診断され当院へ転院.結核の治療中,呼吸困難の訴えと肺うっ血による心不全症状が出現.心電図にて,Ⅰ,aVL,V1-V4にてnegative Tを認めたため,心エコー図施行となった.左室壁運動は,mid-ventricularにて全周性に高度低下,apicalは過収縮を認めた.壁の明らかな菲薄化や輝度の上昇は認めなかった.冠動脈走行と一致しないmid-ventricularの壁運動異常より,たこつぼ心筋症が疑われ保存的に経過観察となった.3日後の観察では,mid-ventricularの壁運動は高度低下から低下,7日後には軽度の低下へと改善した.10日後は,ほぼ正常な壁運動となり心不全も改善した.
【考察】
本症例は,心電図異常,胸部症状がありACSとの鑑別のため専門施設での評価を検討したが,全身状態も悪く転院が難しい状況であった.心エコー図のみの観察であったが,冠動脈走行と明らかに異なる壁運動異常を認めたためACSではなく,たこつぼ心筋症を強く疑うことでリスクを伴う転院および侵襲的検査等を回避し得た.本症例のようにmid-ventricularの壁運動異常をきたすたこつぼ心筋症の報告例は少なく稀な症例であるが,冠動脈走行と壁運動異常部位の矛盾が大きいことからACSとの鑑別に際し心エコー図の果たす役割は非常に大きいと考える.
【結語】
mid-ventricularたこつぼ心筋症の診断に,心エコー図が有用であった1例を経験した.
本症例のように心エコー図での診断は可能であり,左室壁運動異常を評価する際には,mid-ventricularたこつぼ心筋症も存在することを念頭に置く必要があると考えられる.