Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般ポスター 基礎
基礎ポスター

(S711)

超音波速度変化映像法による脂肪肝の非侵襲診断装置の開発

Prototype system for non-invasive evaluation of liver fat by ultrasonic-velocity change imaging method

堀中 博道1, 真野 和音1, 酒井 将君1, 谷川 昇平1, 和田 健司1, 松中 敏行1, 森川 浩安2

Hiromichi HORINAKA1, Kazune MANO1, Masakimi SAKAI1, Syouhei TANIGAWA1, Kenji WADA1, Toshiyuki MATUNAKA1, Hiroyasu MORIKAWA2

1大阪府立大学工学研究科, 2大阪市立大学医学研究科

1Department of Engineering, Osaka Prefecture University, 2Department of Medicine, Osaka City University

キーワード :

【背景と目的】
今日では国民の3割が脂肪肝と言われている.カロリーの過剰摂取,運動不足や飲酒などによって肝臓に中性脂肪やコレステロールなどが過剰に蓄積した結果である.現在の超音波検査では,脂肪肝の有無の判定は可能だが,蓄積脂肪量の定量や病期進行度の判定は困難である.患者にとって負担がなく,かつ未病の段階でも肝臓内脂肪量を定量化できる装置が望まれる
本研究では,我々が以前に考案した超音波速度変化映像法を用いた非侵襲で小型の脂肪肝診断装置を試作した.本装置を麻酔下の家兎に適用して,超音波加温によって得られた速度変化画像と摘出肝の切片から求めた蓄積脂肪割合との相関性を調べた.
【方法】
画像用アレイトランスデューサ(128ch,7.5MHz)の送・受信に小型超音波画像装置SSD-500の内部のボードを用いた.エコー波形を高速でAD変換し,連続的に記録するためにNI社のPXIシステム(AD変換器,ファンクションジェネレータ,ストレージモジュール,コントローラ)を用いた.加温用超音波トランスデューサ(1MHz)を画像用プローブの近くに設置し,画像描出部位を加温した.超音波の出力は1W/cm2であり,生体の安全基準の範囲内である.高栄養食の期間の異なる生存下家兎脂肪肝モデルに本装置を適用した.加温を60秒間行い,加温源をOFF後,10秒間,呼吸・鼓動に対する移動補償を行うために動画モードで画像データを取得した.
【実験結果】
生存下家兎脂肪肝モデル(正常肝:con,高栄養食2週間:HFD-2w,高栄養食4週間:HFD-4w)の超音波速度変化画像を得た.正常肝では速度の変化率が+になり,水分が多いことを示し,HFD-2W,HFD-4Wの場合には速度の変化率がーになり,脂肪分が多くなっていることを示していた.Fig. 1に超音波速度変化画像の速度変化の中央値と,摘出肝の切片に対して顕微鏡一体型マイクロアナライザで求めた肝臓内脂肪蓄積の割合との関係を示す.高い相関性(r=-0.90(p<0.005))が得られた.
【結論】
麻酔下のウサギでの実験結果は,肝臓部分の超音波速度変化割合が摘出肝から求めた脂肪面積割合と高い相関があることを示した.脂肪蓄積の少ない段階(2〜8%)での速度変化率の違いが得られていることから,本装置の初期脂肪肝診断への適用の有効性が示唆された.