英文誌(2004-)
一般口演 整形外科
整形外科2
(S701)
健常膝の超音波による内側半月板の動きに関する検討
The study of movment of Meniscus medialis by ultrasound test
石崎 一穂1, 飯塚 高弘2
Kazuho ISHIZAKI1, Takahiro IIZUKA2
1東京厚生年金病院中央検査室, 2文京学院大学保健医療技術学部臨床検査学科
1Central Clinical Laboratory, Tokyo kousei-Nenkin Hospital, 2Clinical Laboratory Medicine, Bunkyo Gakuin University
キーワード :
【はじめに】
変形性膝関節症(以下膝OA)は,膝関節軟骨が変性・摩耗する疾患であるが,原因は解明されていない.
半月板は体重の荷重を分散させ,膝関節の衝撃を吸収や,曲げ伸ばしの可動性を適切に保つ働きがある.膝OA患者の超音波所見として,この半月板の偏移,脱臼所見が高頻度で観察される.
今回我々は,健常膝による半月板の脱臼の有無と膝の肢位による半月板の動きに関して検討した.
【対象および方法】
本検討に同意を得た文京学院大学女子学生53名のうち,過去に膝の痛みによる通院歴がなく,超音波検査上骨棘の形成が認められなかった50名(年齢20〜22歳,平均20.8歳)の右膝を対象とした.
超音波診断装置LOGIC S6(GE Healthcare),7.5MHzリニア型プローブを使用した.
検討は,以下の4種類の膝の肢位における半月板の前側と内側の位置変化の評価とした.
肢位①:ベッド上仰臥位にて膝を30度程度に屈曲した状態,肢位②:ベッド上仰臥位で膝を伸展した状態,肢位③:立位にて右足に軽く荷重した状態,肢位④:マスター2ステップ運動負荷用の台を用いて,階段から降りるように最上段から右足で1段降りて右足に全体重を荷重した状態とした.
各々の肢位で,膝内側アプローチ長軸像は内側側副靭帯が描出される部位,膝前側アプローチ長軸像は膝蓋骨の内側で観察した.
半月板の動きの評価方法は,半月板が大腿骨と脛骨表面を結ぶ線より突出しているか否かを判断した.突出している場合には,大腿骨と脛骨表面を結ぶ線から,突出した半月板の頂点までの距離を計測した.各肢位における半月板の距離を膝の角度と荷重による半月板の動きをとして比較した.
【結果】
膝内側への半月板の動きの円筒では,距離が肢位①で0.4±0.8 mm,肢位②で1.4±0.9 mm,肢位③で2.1±0.5 mm,肢位④で2.1±0.6 mmで,肢位①と肢位②,肢位③,肢位④の間,肢位②と肢位③位④の間で有意差がみられたが肢位③と肢位④に有意差はみられなかった.
前方側への半月板の動きの検討では,肢位
①で0±0 mm,肢位②で1.3±1.1 mm,肢位③で2.2±0.7 mm,肢位④で2.1±0.8 mmであった.肢位①と肢位②,肢位③,肢位④の間,肢位②と肢位③,肢位④の間で有意差がみられた.肢位③と肢位④に有意差はみられなかった.
【考察】
超音波による膝OA患者の観察において,半月板の偏移・脱臼は頻度の高い所見である.今回,健常膝における各肢位での半月板の動きを観察した.
全例で各肢位における半月板の動きは確認できたが,膝OAで診られるような大きな偏移や脱臼は認められず,半月板の膝関節内での動きは関節内のバランスを取るために限られた範囲で動くもので,脱臼することは無いことが確認できた.
また内側の半月板の動きは,伸展位で前方内側に移動し,それが荷重によって更に移動するが荷重の程度で大きく変化しないことが示唆された.
現段階では,あくまでも20歳代のデータによる結果にとどまるが,今後各年代の半月板の動きや,健常膝と変形性膝関節症との動きの相違に関する検討を重ねる必要がある.
本研究は文京学院大学保健医療技術学部臨床検査科の卒業研究との共同研究である.