Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 整形外科
整形外科2

(S701)

大腿骨膝関節軟骨の厚みの検討 第2報

The study of normal ultrsonic image forfemur hyaline cartilage second report

石崎 一穂1, 金子 未歩2

Kazuho ISHIZAKI1, Miho KANEKO2

1東京厚生年金病院中央検査室, 2文京学院大学保健医療技術学部臨床検査学科

1Central Clinical Laboratory, Tokyo Kousei-nenkin Hospital, 2Clinical Laboratory Medicine, Bunkyou Gakuin University

キーワード :

【はじめに】
変形性膝関節症(膝OA : osteoarthritis)は,膝関節軟骨の変性により軟骨が擦り減る,高齢女性に多い疾患である.
昨年本学会で健常膝の内側荷重部軟骨の厚みに,30歳代以降での年齢差はなく,最低値は1.0 mm以上であると報告した.しかし,膝OA患者の中には,内側の軟骨厚が1.0 mm以上に保たれている症例が多数存在し,絶対値による軟骨厚の評価だけで軟骨の菲薄化を判定できないと考え,今回は,大腿骨荷重部軟骨の内側と外側の厚みの比較検討を行った.
【対象および方法】
対象は,データ検討に了解を得た文京学院
大学女子学生,および本院病院女性職員と受診女性患者64名128膝(20〜79歳)とした.全例膝の怪我や疾患,膝の痛みによる通院歴の無いことを確認した.
方法は,仰臥位にて膝を最大屈曲させ,両下肢の荷重部軟骨の内側と外側の厚みを計測した.膝蓋骨の両側に位置する荷重部軟骨にプローブを長軸に当て,軟骨表面に超音波ビームが垂直に入射するようにプローブを傾け,軟骨表面の境界面に明瞭な線状の高エコーラインが描出されたところで計測をした.計測ポイントは,軟骨表面の高エコーラインの上縁から軟骨下骨の高輝度エコーラインの上縁までとしてた.
超音波診断装置はGE Healthcare社製LOGIQ S6・7.5MHzリニアプローブおよびHITACHIアロカ社製Ascendus・18MHzリニア型プローブを使用した.
検討内容は以下のとおりである.
1)内側と外側の大腿骨荷重部軟骨の厚みの違いを比較検討した.
2)大腿骨荷重部軟骨の内側と外側の厚みの差,内側と外側の厚みの比をそれぞれ算出し検討した.
【結果】
1)対象全例の大腿骨荷重部軟骨の内側と外側の厚みの比較は,内>外36膝(20歳代27膝・30歳代9膝),内=外33膝(20歳代22膝・30歳以降11膝),内<外59膝(20歳代41膝・30歳以降17膝)であった.
2)20歳代の大腿骨荷重部軟骨厚は,内側は平均値1.73±0.25mm,外側は平均値1.71±0.25 mmで,30歳以降では,内側は平均値1.70±0.28mm,外側は平均値1.60±0.25 mmでそれぞれ.内側と外側の軟骨厚の平均値の間に有意差はなく年代による差もなかった.
2)大腿骨荷重部軟骨厚差(内側−外側)は,20歳代で0±0.20 mm,最大差は+0.6 mmであった.30歳以降では0.06±0.19mm,最大差は+0.4mmであった.
大腿骨荷重部軟骨厚比(内側/外側)の値は,20歳代で1.02±0.12mm,最大比は1.36,30歳以降では1.04±0.12mm,最大比は1.31であった.
【考察】
今回の検討から,健常膝の大腿骨荷重部軟骨は,内側と外側の厚みに差はなく,加齢による差もないことが示された.
また,超音波検査による膝OA診断に際しては,軟骨の厚みの絶対値だけではなく,内側と外側の差や比などの指数も判断の一助となると考えられた.