Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 整形外科
整形外科2

(S700)

超音波検査を用いたアキレス腱縫合術術後早期の修復過程評価

Early ultrasonographic evaluation of repaired achilles tendon with surgically treatment

駒 美佳子1, 三岡 智規2, 平松 久仁彦2, 細井 亮二1, 田中 太晶2, 武 靖浩2, 浅岡 伸光1, 寺西 ふみ子1

Mikako KOMA1, Tomoki MITSUOKA2, Kunihiko HIRAMATSU2, Ryouji HOSOI1, Takaaki TANAKA2, Yasuhiro TAKE2, Nobuaki ASAOKA1, Fumiko TERANISHI1

1八尾市立病院中央検査部, 2八尾市立病院整形外科

1Department of Clinical Laboratory, Yao Municipal Hospital, 2Orthopaedic Surgery, Yao Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
アキレス腱断裂の診断に超音波検査は有用であるが,その一方でアキレス腱縫合術後に腱の修復状態の質的評価を行った報告は殆どなく,また術後6ヶ月以内の早期の評価を行っている報告はない.近年,超音波装置の精度向上により,形状の評価のみならず腱実質部および腱周囲の状態をより詳細に観察する事が可能となってきた.今回我々は,従来主治医の経験により行われてきた修復度評価を,術後早期から経時的に超音波検査を行う事により定量的に評価したので報告する.
【対象および方法】
当院にて2011年3月から2013年8月までに片側アキレス腱断裂に対し縫合術を施行した9名(全例男性),平均年齢41(23-63)歳を対象とした.手術術式はケスラー変法で行い,術後は2週のギプス固定後補高装具を装着,術後2か月で装具を除去した.これらの症例に対して術後1,2,3,4,6ヶ月に超音波検査を行い評価した.超音波検査装置は日立アロカ社製 F75を使用し,プローブは高周波リニア型プローブ5415を使用した.計測はまず,修復部における腱の断面積(以下CSA)を,健側に対する比で計測した.次に,Mollerらの方法(2002 KSSTA)に準じて,①欠損の有無(なし:2点,0-5mm:1点,>5mm:0点),②腱実質内の高輝度エコー領域の割合(3割以下:2点,3-8割:1点,>8割:0点),③fibrillar patternの連続性(8割以上:2点,3-8割:1点,<3割:0点),④周囲組織のedemaの程度(なし:2点,局所:1点,広汎:0点)として8点満点でスコア化して評価した.
【結果】
アキレス腱修復部のCSAは,術後1,2,3,4,6ヶ月でそれぞれ健側の平均3.7倍(n=7),5.2倍(n=6),6.1倍(n=4),5.8倍(n=7),6.4倍(n=2)であった.Moller scoreは術後1,2,3,4,6ヶ月でそれぞれ平均2.9点(n=8),4.6点(n=7),6.6点(n=5),7.0点(n=6),8.0点(n=2)であった.1症例に術後2ヶ月に縫合部の部分断裂を認めたが,この症例はやや修復の遅れが認められたものの,術後6ヶ月の時点ではCSAは健側の5.2倍,Moller score8点まで回復した.
【考察】
今回我々は,超音波を用いてアキレス腱修復術術後の腱の状態を術後早期から経時的に詳細に評価した.修復腱のCSAは,術後1ヶ月から健側と比較して3倍以上になり,術後1年経過してもまだ健側と比較して大きくなっていた.動物実験において,修復されたアキレス腱は正常のアキレス腱と比較して生体力学的に強度が低下すると報告されており,CSAを増加させる事により強度を維持していると考えられた.また,Moller scoreを用いたアキレス腱実質の質的評価にて,術後4ヶ月でほぼ健側と同じ状態になっている事が判明した.従来の外科医の経験に基づいた触診による修復度評価と比較して,超音波検査は経時的に定量的評価が可能である事,また簡便で非侵襲性である事から,頻回に検査を施行可能であり,今後症例を積み重ねる事により,アキレス腱修復術術後修復状態の評価に有用な方法となる可能性が示唆された.
【結語】
今回我々は,超音波を用いてアキレス腱修復術術後の腱の状態を術後早期から経時的に詳細に評価し,修復腱は術後4ヶ月でほぼ健側と同じ状態になっていた.超音波を用いた評価法は今後,修復状態の評価に有用な方法となる可能性がある.