Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 眼科
眼部超音波

(S694)

超音波パルスドプラ波形を用いた自律神経機能検査R-R間隔変動係数測定

Assessment of autonomic nervous system by coefficient of variation of R-R intervals using ultrasonic pulsed Doppler waveform

山田 利津子1, 2, 辻本 文雄3, 矢吹 和朗4, 樋口 亮太郎5, 西出 忠之1, 水木 信久1

Ritsuko YAMADA1, 2, Fumio TSUJIMOTO3, Kazuro YABUKI4, Ryotaro HIGUCHI5, Tadayuki NISHIDE1, Nobuhisa MIZUKI1

1横浜市立大学大学院視覚病態学講座, 2聖マリアンナ医科大学アイソトプ研究室, 3聖マリアンナ医科大学臨床検査医学教室, 4済生会横浜市南部病院眼科, 5横浜南共済病院眼科

1Department of Visual Science, Postgraduate School, Yokohama city University School of Medicine, 2Radioisotope Institute, St. Marianna University School of Medicine, 3Department of Laboratory Medicine, St. Marianna University School of Medicine, 4Department of Ophthalmology, Saiseikai Yokohama-shi Nanbu Hospital, 5Department of Ophthalmology, Yokohama Minami Kyousai Hospital

キーワード :

【目的】
心拍変動(HRV)は,心拍の変化を表す尺度であり,通例,ECGトレースまたは動脈圧トレースから,連続する心拍間隔を分析することによって算出される.HRVは,循環機能の自律調節活動を表す指標とされていて,自律神経系活動のもっとも確実な解析手法とされている.私達は越婢加朮湯,抑肝散ともに眼圧の変動率が1時間後から前値と比較して有意に下降し,心拍数は越婢加朮湯が1時間後から有意に減少し,抑肝散は1時間後から有意に増加したことを報告した.このことから眼圧低下が心拍数と関連がある可能性が推定されるため,今回は抑肝散と越婢加朮湯の眼圧降下作用について自律神経機能を評価するR-R間隔変動係数(CVRR)と眼窩内動脈の血流動態から検討した.
【対象と方法】
雌Dutch種家兎8匹(体重2.3±0.3kg)を2群に分け,一群には抑肝散(ツムラ)原末325mg/kgを,他1群には越婢加朮湯(ツムラ)原末325mg/kgを懸濁液として単回内服させ,1,3,6時間後に眼圧,心拍数,外眼動脈OA,短後毛様動脈SPCAの流速を測定し,投与前値と比較した.流速の測定は超音波診断装置SSA-260(東芝)中心周波数7.5MHzリニア電子スキャナを用いたパルスドプラ法で,眼圧測定はトノペンを用いて行った.日内変動の測定は20匹40眼(体重2.2±0.5kg)を用いた.点眼後の各時刻における測定値(x)の,基準値(x0)からの変動率(δx)を算出し,投与前値と比較した.今回,CVRRは10心拍のR-R間隔の変動係数から手計算で算出した.統計学的検討では2群間の有意差検定にはMann-WhitneyのU検定を用量反応曲線の有意性は創刊分析を用いた.
【結果】
CVRRと心拍数変動率(δHR)の相関分析をおこなったところ,越婢加朮湯投与群(E群)では有意な(p<0.0264)正相関,抑肝散投与群(Y群)では有意な(p<0.0214)負相関を示した.CVRRと眼圧変動率では両群ともに有意な(p<0.0001)正の相関を示した.またCVRRと流速の相関分析ではE群では外眼動脈平均流速変動率と,またY群では短後毛様動脈変動率と有意な(p<0.0001)負相関を示した.
【考察】
現在使用されている抗緑内障薬のうち自律神経に作用する点眼薬にはβ遮断薬,β1遮断薬,αβ遮断薬,α1遮断薬,α2刺激薬,交感神経刺激薬,副交感神経刺激薬など多種多様であるが,薬効はいずれも房水産生抑制,房水流出促進である.使い分けについての提案がなされているが,基準については明確な根拠がみられない.今回の結果から自律神経機能と薬効に有意な関連があることが示唆された.一般的な周波数領域解析は,離散フーリエ変換(高速フーリエ変換)を心拍間隔時系列に応用したもので,様々な周波数の変動量が示されるが,今回は試みとしてドプラ波形を利用したCVRRのみについて検討した.その結果越婢加朮湯ならびに抑肝散の投与初期からみられる眼圧下降はβ遮断薬ならびにα遮断薬様作用が関連している可能性が示唆された.
【結論】
心電図・ホルタ心電図を使用した自律神経機能検査に比べ,標本数の点で精度は劣るものの,超音波ドプラ法によるCVRR測定は同時に血流動態も把握できる点で有用であることが示唆された.今後LF/HF比の検討などが期待される.