寺澤 良夫¹, 広田 むつ子², 須藤 誠二², 野村 禎子², 野村 幸宏², 鈴木 とよみ², 五十嵐 やよい²

Yoshio TERASAWA¹, Mutsuko HIROTA², Seiji SUDO², Yoshiko NOMURA², Yukihiro NOMURA², Toyomi SUZUKI², Yayoi IGARASHI²

¹仙台社会保険病院内科, ²仙台社会保険病院超音波検査室

¹Internal medicine, Sendai Shakaihoken Hospital, ²Ultrasonic Laboratory, Sendai Shakaihoken Hospital

キーワード :

【はじめに】
血液透析症例（HD）に腎癌（RCC）が高頻度発生の報告は多い．HD・PCK症例のRCC：16人について前回（第86回）報告した．今回，HD・ACDK症例のRCCについて検討した．
【対象】
1984.4〜2012.12までの28年間で手術で確定診断がついたHD・RCC症例272人（325RCC，両腎癌53人）のうち，ACDK（+）症例のRCC165人を対象とし，US診断，頻度，US・CT・Angio．診断との対比，病理，誤診例について検討した．摘出腎の割面で，嚢胞面積が50％以上を占める例をACDK（+）とした．
【結果】
1．当院で手術で確定診断がついたHD症例のRCC：272人（325RCC，両腎癌：53人）のうち，ACDK（+）のRCCは165人（61％，210RCC，両腎癌：45人）と萎縮腎（33％，91人，96RCC，両腎癌：5人），PCK発生RCC：16人（6％，19RCC，両腎癌：3人）と比較し，最も多く発生していた．
2．ACDK発生のRCCのUS所見（165人，210RCC，両腎癌：45人）．嚢胞内乳頭状腫瘍：132RCC（63％），嚢胞内に腫瘍充満：73RCC（35％），MCRCC型：5RCC（2％）で，halo（+）：11RCC（5％），power doppler（+）：47RCC（33％）
3．HD・ACDK・RCCの諸検査診断，US：100％，CT：41％（87/210），Angio．：20％（10/50），USによるRCCの検出率が最も高かった．
4．組織診断，clear cell carc．：36％（77RCC），granular cell carc．：17％（35RCC），papillary RCC．：16％（33RCC），spindle cell carc．：3％（7RCC），chromophobe cell carc．：1％（2RCC），その他（混合系）：27％（56RCC）
5．RCCと誤診手術例（5人，2.3％，5/215），adenoma：2人，血腫：1人，フィビリン様肉芽：1人，dysplasia：1人
この誤診例を0にしなければならない．その為には，これらの症例が小腫瘍例が多いのでさらにfollow upし（年一回），腫瘍の変化（増大，power dopplerでの明瞭な腫瘍内血流の証明），またはCT・MRIでのRCC（-）→RCC（+）への診断名変更後まで，手術を急がないことにより誤診例を防ぐことが可能と考えている．
【まとめ】
HD症例のRCCには，ACDK・萎縮腎・PCK発生があるが，今回ACDK例について検討した．手術で確定診断がついたHD症例のRCC：272人（325RCC）のうち，ACDK症例のRCC：165人（210RCC，両腎癌：45人）は61％を占め，萎縮腎例：91人（33％，96RCC），PCK症例：16人（6％，19RCC）と比べ，もっとも高頻度発生していた．両腎癌症例もACDK例：45人（ACDKのRCCの27％），萎縮腎例：5人（萎縮腎の5.5％），PCK：3人（19％）で，ACDK例に多く見られた．ACDKのRCCの検出率はUS：100％，CT：41％，Angio．：20％で，USがもっとも高く，過去のHD・RCC例（272人，325RCC）を参考にすれば，USのみがRCCと診断したとしても手術施行可能と考えている．HD・ACDK・RCCの検出には，年一回のUSスクリーニングで十分と考えている．