Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 腎泌尿器
腎泌尿器2

(S690)

腎充実性病変(腎細胞癌,腎血管筋脂肪腫)におけるhumpの検討

The study of the ultrasonography finding (hump) in renal lesion (renal cell carcinoma and angiomyolipoma)

内海 良太1, 石井 勝1, 石井 那奈1, 高橋 麻里子1, 野口 瑞恵1, 小田 悠太1, 坂巻 梓帆1, 小宮 雅明1, 若杉 聡2, 石田 秀明3

Ryota UTSUMI1, Masaru ISHII1, Nana ISHII1, Mariko TAKAHASHI1, Mizue NOGUCHI1, Yuta ODA1, Azuho SAKAMAKI1, Masaaki KOMIYA1, Satoshi WAKASUGI2, Hideaki ISHIDA3

1亀田総合病院超音波検査室, 2亀田総合病院消化器診断科, 3秋田赤十字病院秋田赤十字病院超音波センター

1Division of ultrasonographic examination, Kameda Medical Center Hospital, 2Division of Digestive Diagnosis Department of Internal Medicine, Kameda Medical Center Hospital, 3Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【目的】
日本消化器がん検診学会は超音波検査の質や異常所見の判定基準などの施設間の差をなくすために,腹部超音波がん検診基準(以下がん検診基準)を作成した.当院でもがん検診基準を人間ドックの超音波検査に使用している.がん検診基準の腎の項目に記載されている,境界部低エコー帯(以下halo),嚢胞変性や腎腫瘍のエコーレベルの所見は,腎細胞癌(以下RCC)と腎血管筋脂肪腫(以下AML)の鑑別に有用である.我々は,これらの所見に加えて,腎腫瘍の腎実質からの突出像(以下hump)に着目し,RCCとAMLとの鑑別に有用と報告してきた.今回は,RCCとAMLのhumpの形状,輪郭について検討した.
【対象】
対象は2007年7月から2012年2月まで,当院で診断され手術に至ったRCC50例と2009年5月から2012年11月までに診断され,経過観察されているAML50例である.AMLはCTまたはMRI検査のどちらかで診断され,超音波検査で1年以上大きさの変化していない症例を対象にした.
【方法】
検討項目はhumpの形状とhump部分の輪郭である.humpの形状は腫瘤のhump基部の幅を『底辺』とし,humpの最大突出部分から底辺への垂直方向の長さを『高さ』として測定し,さらに亜有茎性と広基性の2分類に大別した.
【結果】
humpはRCCで全例(100%)認められた.そのうち,humpの形状が亜有茎性16例(32%),広基性34例(68%)であった.『底辺』は中央値33mm,『高さ』は中央値15mmであった.輪郭は平滑40例(80%),不整10例(20%)であった.AMLではhumpあり17例(34%),なし33例(66%)であった.humpしたAML17例中humpの形状は亜有茎性2例(12%),広基性15例(88%)であった.『底辺』は中央値20mm,『高さ』は中央値15mmであった.輪郭は平滑5例(29%)と不整12例(71%)であった.
【考察】
humpの『高さ』だけを見ればRCCとAMLに数値の差はなかった.RCCはhump基部の『底辺』の幅が広く,humpの輪郭が平滑である症例が多い傾向だった.AMLはhump基部の『底辺』の幅が狭く,輪郭が不整である症例が多い傾向だった.RCCはAMLにくらべて,亜有茎性の形態のhumpが若干多かった.RCCのhumpの輪郭が平滑であることが多いのは,RCCが膨張性に発育し,偽被膜を有することが多いためと推察する.AMLのhumpの輪郭が不整なのは,偽被膜を伴わず,内部の脂肪成分を主体とする後方散乱が影響していると推察する.humpを伴う腫瘍を認め,RCCかAMLかの鑑別に難渋した場合に,humpの形状や輪郭も参考にすれば,診断の一助になると考えた.今回の検討は,腫瘍の大きさに対するhumpの大きさ,形状を考慮していないが,今後は腫瘍の大きさも考慮した検討を行いたい.
【結語】
当院のRCCとAMLの超音波検査所見で,humpに着目して比較検討を行った.humpがRCCとAMLの鑑別に有用であることを再確認し,humpの形状と輪郭の所見も加味すればさらに有用であると考えた.