Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 腎泌尿器
腎泌尿器1

(S688)

ソノウレスログラフィーが尿道の観察に有効であった陰茎黄色肉芽種の一例

Sonourethrographic finding of the case of xanthogranulomatous inflammation

皆川 倫範, 加藤 晴朗, 小川 輝之, 石塚 修, 西沢 理

Tomonori MINAGAWA, Haruaki KATO, Teruyuki OGAWA, Osamu ISHIZUKA, Osamu NISHIZAWA

信州大学医学部泌尿器科

Urology, Shinshu University School of Medicine

キーワード :

【症例】
75歳男性.
【主訴】
陰茎の痛み.現病歴;陰茎の痛みを認めた4か月後に当院を受診した.CTで陰茎内に紡錘形の腫瘤を認めた.陰茎内腫瘤の針生検を行ったが,検体が採取できなかった.吸引により無菌性の膿を認めたため,切開排膿を行った.その際に腫瘤の一部を切除したところ,病理診断は黄色肉芽種であった.結核菌は陰性であった.その後,抗菌薬投与などで保存的に経過を観察したが,腫瘤は縮小しなかった.受診2か月後に切開排膿および膀胱瘻造設術を施行した.以後も陰茎の排膿と痛みが持続した.受診4か月後に陰茎切除術および会陰瘻造設術を施行した.手術直前に尿道からゼリーを注入した状態で超音波検査(ソノウレスログラフィー)を施行したところ,炎症で破壊された尿道と膿瘍,肉芽腫を明瞭に観察することができた.(図)切除した陰茎を切開したところ,超音波検査の所見と病変の局在や破壊された尿道の形態が一致していた.術後,陰茎部の痛みは軽快し,膀胱瘻を抜去した.病理診断は黄色肉芽腫であった.
【考察】
陰茎部の黄色肉芽種は非常にまれな疾患で,報告は少ない.また,陰茎切除までに至るような重篤化した症例もまれである.本症例は制御不能な陰茎膿瘍で,痛みも強く,排膿とともに著しくQOLを低下させていた.陰茎の温存を断念し,陰茎切除術を施行した.一方,尿道内に生理食塩水などの液体を注入して尿道内腔を観察する超音波検査方法はソノウレスログラフィーと呼ばれ,近年では尿道形成術後の経過観察での有用性が報告されている.以前に我々が報告しソノウレスログラフィーの変法は,ゼリーを注入して経皮・経直腸超音波検査を併用するもので,粘性が高いゼリーを用いることにより尿道形態の観察が容易になることと,経直腸超音波を組み合わせることによって尿道全長が観察可能な点に利点がある.本症例では,CTによる尿道の形態学的評価が不能であった.しかし,ソノウレスログラフィーを用いることにより,尿道・膿瘍・肉芽腫の評価が明瞭であった.本症例では陰茎温存という患者利益に結び付けることはできなかったが,摘出された標本と比較することによってその有用性が示された.ソノウレスログラフィーは一般的な検査とは言えないが,著しく破壊された尿道でも立体的な観察が可能なので,尿道鏡や尿道造影とは異なる視点と有用性をもつ検査方法である.