Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 血管
大動脈・症例

(S683)

超音波検査による椎骨動脈血流評価が有用であった頚性めまい症の一例

Usefulness of vertebral arterial blood flow evaluation by ultrasonography in bow hunter’s syndrome : A case report

有吉 亨1, 和田 靖明1, 奥田 真一2, 内田 耕資2, 村上 和華子2, 西川 寛子1, 田中 伸明3, 矢野 雅文2

Toru ARIYOSHI1, Yasuaki WADA1, Shinnichi OKUDA2, Kosuke UCHIDA2, Wakako MURAKAMI2, Hiroko NISHIKAWA1, Nobuaki TANAKA3, Masafumi YANO2

1山口大学医学部附属病院超音波センター, 2山口大学大学院医学系研究科器官病態内科学, 3山口大学大学院医学系研究科病態検査学

1Ultrasound Examination Center, Yamaguchi University Hospital, 2Department of Medicine and Clinical Science, Yamaguchi University Graduate School of Medicine, 3Clinical Laboratory Sciences, Yamaguchi University Graduate School of Medicine

キーワード :

症例は62歳男性.閉塞性肥大型心筋症および心室細動に対して埋め込まれた埋め込み型除細動器(ICD)の電池交換目的にて入院.2か月前より頚部左回旋時にのみ出現する回転性めまいを自覚していた.ICD埋め込み後であり,MRIは施行できず原因検索目的にて頸動脈超音波検査を施行した.総頸動脈に内中膜複合体の明らかな肥厚やプラーク変化はなく,総頸動脈血流速度の左右差や拡張期血流速度の低下はみられなかった.椎骨動脈(VA)の血管径は右5mm,左3mm,Rt/Lt ratio 1.7であり,左右差を認めた.また,左VA平均血流速度の低下(10cm/s)が見られ,左VAはPICA endingもしくは低形成が疑われ,右VA血流速度は44cm/sと代償性に亢進していた.さらに,頸部左回旋により右VAにて収縮期血流の低下および拡張期血流の消失を認め,Bow hunter’s syndromeが疑われる所見であった.
Digital subtraction angiography(DSA)では左VAのPICA endingを認め,右VAは頚部左回旋に伴うC2 levelでの閉塞,また3D CT angiographyでは後交通動脈は未発達であり,DSAと同様に頸部左回旋時にC2横突起によるVA圧迫を認め,Bow hunter’s syndromeと診断された.
Bow hunter’s syndromeは頚部回旋により頸椎(C1-C2間)が椎骨動脈を圧迫することで血流障害が生じ,めまいなどの脳幹症状を呈する比較的まれな疾患であり,Willis輪や対側VAからの側副血行の低下を有する.原因として動脈硬化性変化,VA低形成・VA PICA ending,外的圧迫,椎骨動脈解離等が挙げられ,治療法には保存的治療(頚部回旋角度の制限指導,カラー作成による回旋制限)および外科的治療(C1-C2 fusion,椎骨動脈除圧術)がある.本症例は後交通動脈の未発達およびVA PICA endingを認め,頸部左回旋により繰り返す症状を有しており,カラー作成による回旋制限にて経過観察となった.
頚性めまい症における鑑別診断の一つとしてBow hunter’s syndromeの可能性も念頭に置いた検査が必要であり,非侵襲的な検査である頸動脈超音波検査による椎骨動脈血流評価は診断の一助となると考えられた.