Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 血管
大動脈・症例

(S681)

体外式超音波による腹部大動脈瘤の分枝血管描出の試み

A Trial of Abdominal Aortic Aneurysm Branches Imaging by Tranceabdominal Ultrasonography

山下 都1, 森田 一郎2

Miyako YAMASHITA1, Ichiro MORITA2

1川崎医科大学附属川崎病院中央検査部, 2川崎医科大学総合外科

1Division of Clinical Laboratory, Kawasaki Medical School Kawasaki Hospital, 2Department of General Surgery, Kawasaki Medical School

キーワード :

【はじめに】
腹部大動脈瘤(以下AAA)の治療は,従来の外科的治療から低侵襲性であるステントグラフト内挿術が主流となり,術後の合併症としてエンドリークが注目されている.エンドリークはtypeⅠ〜Ⅴに分類され,下腸間膜動脈(以下IMA)や腰動脈などの分枝血管から瘤内に逆行する血流によるtypeⅡの頻度が最も高いと言われている.
【目的】
ステントグラフト内挿術前にAAAから分岐する血管の数や太さなどの観察を行うことが,typeⅡエンドリークの発生予測に有用であるかを検討することの前段階として,体外式超音波によるAAA分枝血管の描出を試みた.
【対象】
2012年11月〜2013年8月にAAAステントグラフト内挿術施行前に超音波検査を施行した4例(男性2例,女性2例,平均年齢79.5歳(71〜83歳)).瘤はいずれも腎動脈分岐より末梢から総腸骨動脈分岐部まで存在し,平均径46.8mm(38〜56mm,嚢状瘤1例,紡錘状瘤3例).
【方法】
Bモードとカラードプラ,ADF(advanced dynamic flow)を用いて,AAAから分岐する血管とその数・血管径を計測した.超音波診断装置は東芝社製AplioXGTM 790A,プローブは3.75MHzを用いた.
【結果】
全例(4/4例)でIMAはBモードで描出された.その他の分枝として,腰動脈は1例(1/4例)で2本,3例(3/4例)で各1本ずつ,正中仙骨動脈が1例のみ(1/4例)いずれもドプラ法で描出可能であった.血管径はIMAが2〜3.5mm(平均2.9mm),腰動脈が2〜3mm(平均2.6mm),正中仙骨動脈は1mmであった.
【考察】
IMAはAAA腹側から分岐しており,比較的血管径が太く体表に近いことから,Bモードで描出可能であった.腰動脈はドプラ法を用いることで指摘可能であったが,実際には腰動脈は対側複数存在しているにも関わらず1〜2本しか描出できておらず,描出率は低かった.その原因として,腹部大動脈の蛇行や瘤による血管分岐角度の変化,壁在血栓,また血管が細いことやクラッタノイズのため認識し難い,などが考えられた.正中仙骨動脈はドプラ法でのみ描出可能であり,描出率は極めて不良であった.しかし,現在4例のうち術前超音波検査で腰動脈が2本明瞭に描出され,さらに正中仙骨動脈が描出可能であった1例にのみtypeⅡエンドリークを認めており,血管径の太さや通常描出し難い分枝血管が描出し得たことがtypeⅡエンドリークの発生に何らかの関係がある可能性が示唆された.一方手技上の工夫として,Bモードによる観察では体表に対し垂直方向からのスキャンでは細い血管の描出は不良であり,斜めから入射しAAAを音響窓とすることで明瞭に描出することができた.またドプラ法では腹部大動脈の拍動によるクラッタノイズも多く,ADFを用いることでより明瞭な描出が可能であった.
【結語】
AAAの分岐血管描出率は必ずしも高いとは言えないが,IMA,腰動脈,正中仙骨動脈の描出が可能であった.今後引き続き術前超音波検査で分枝血管の観察を行い,血管径,血流速度,血流速パターンの検討とtypeⅡエンドリークとの関連性について検討を行う予定である.