大平 里佳¹, 葛西 智子¹, 三上 秀光¹, 高橋 千里¹, 菅原 亜紀子¹, 藤田 央², 篠崎 毅², 成田 弘¹, 鈴木 博義¹

Rika OODAIRA¹, Tomoko KASAI¹, Hidemitsu MIKAMI¹, Chisato TAKAHASI¹, Akiko SUGAWARA¹, Hiroshi FUJITA², Tsuyoshi SINOZAKI², Hiroshi NARITA¹, Hiroyoshi SUZUKI¹

¹独立行政法人国立病院機構仙台医療センター臨床検査科, ²独立行政法人国立病院機構仙台医療センター循環器内科

¹Department of Clinical Laboratory Medicine, Sendai Medical Center, ²Department of Cardiology, Sendai Medical Center

キーワード :

【背景】
静脈の圧迫が静脈血栓塞栓症（VTE）の発症に関連していることが知られているが，そのリスクを定量的に評価した報告はない．本研究の目的は，子宮筋腫径が症候性VTE発症のリスク因子となるか否かを評価することである．
【対象】
平成19年から平成25年まで当院産婦人科を受診し，手術適応と判断された子宮筋腫患者連続951例を対象とした．妊娠，悪性腫瘍，骨盤内炎症性疾患，卵巣嚢腫（直径3 cm以上），ステロイド使用例，外傷は除外した．
【方法】
子宮筋腫径はMRIまたはCTの水平断面像における子宮筋腫最大径と定義した．多発性子宮筋腫の場合は全ての筋腫を含めた最大径とした．症候性VTEは症状を有する下肢静脈血栓症，または，肺塞栓症と定義した．下肢静脈血栓症は下肢静脈超音波検査によって，肺塞栓症は胸部造影CT検査によって診断した．BMI，年齢，7日以上の安静臥床，脱水，子宮筋腫径を独立変数，症候性VTEの存在を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った．また，子宮筋腫径を4 cmごとの階級に分類し，それぞれのVTE有病率を検討した．
【結果】
症候性下肢静脈血栓症は8例，症候性肺塞栓症は3例に認めた．死亡例はいなかった．子宮筋腫径（HR 1.003，95％CI 1.001-1.004，p＜0.01），BMI（HR 1.003，95％CI 1.001-1.004，p＜0.001），7日以上の安静臥床（HR 1.205，95％CI 1.108-1.311，p＜0.001）が症候性VTEの発症に関連していた．子宮筋腫径が4 cm未満，4 cm以上8 cm未満，8 cm以上12 cm未満，12 cm以上16cm未満，16 cm以上20 cm未満，20 cm以上24 cm未満のそれぞれの階級における症候性VTEの有病率は，0％，0.5％，0.9％，1.8％，5.6％，11.1％であり，指数関数によって良好な近似が可能（y= 0.19e0.81，r2=0.99）であった．
【結語】
手術適応の子宮筋腫患者において，子宮筋腫径，BMI，長期臥床は症候性VTE発症のリスク因子である．症候性VTE有病率は子宮筋腫径の増大に伴い指数関数的に増大する．