Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 血管
動脈硬化

(S677)

性差と月経周期によるFlow-Mediated Dilatation(FMD)とshear stressへの影響

Difference in Endothelium-Dependent Flow-Mediated Dilatation of the Brachial Artery by the Menstrual Cycle and Gender

末永 弘美, 久安 梨加, 新歩一 あかね, 波多野 美月

Hiromi SUENAGA, Rika HISAYASU, Akane SHINPOICHI, Mitsuki HATANO

山口大学大学院医学系研究科保健学専攻

Faculty of Health Sciences, Yamaguchi University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景と目的】
上腕動脈におけるFMD検査法は,血管内皮機能評価法として広く用いられている.FMD検査法は,反応性充血によりおこる血管内皮細胞へのずり応力(shear stress)がもたらす血管拡張反応を%FMDとして評価するものである.近年,FMDよりもむしろshear stressの心血管イベント危険因子との関連が強いことが報告されるなど,FMD検査におけるshear stress定量化の必要性が明らかになっている.一方でエストロゲンは血管内皮保護作用を持つと考えられているものの,FMDやshear stressに及ぼす影響についての検討は少ない.これまでに我々は月経周期のFMD,shear stressの影響を検討してきたが,本研究ではさらに症例数を集積し,性差における影響についても検討を行った.
【対象と方法】
対象は若年健常男性12名(22±3歳),若年健常女性38名(21±1歳)とした.対象女性は基礎体温測定から導き出した月経期,卵胞期,黄体期それぞれにおいてFMD検査を実施した.FMD測定における駆血条件は,SBP+50 mmHg,5 minの前腕部駆血とした.13.5 MHzの高周波プローブを搭載した超音波診断装置2台を用いて,FMD測定のために安静時および駆血解除後の血管径変化を右上腕動脈の中枢側で,shear stressの測定のために血流速度の変化を右上腕動脈の抹消側で連続記録した.shear stressは,駆血解除直後からピークまでのpeak flow AUC(area under curve)を用い評価を行った.また,超音波診断装置によって左右総頚動脈の血管弾性率(stiffness parameter:β値)を測定し,FMD検査終了後の採血によって,shear stress算出のための血液粘度を測定し,女性ではエストラジオール(E2),プロゲステロン(P4)も測定した.
【結果】
FMD,shear stress,血管弾性率は,月経周期および男女間に有意な差は認めなかった.また,E2は,月経期に比べ卵胞期・黄体期で有意に高値を示し,FMDに対して指数関数的に増加する傾向を認めた.shear stressに対するFMDの比率(FMD/SS)については,E2低値の女性は,E2高値の女性に比べ有意に低値を示し,男性に比べても有意に低値を示した.
【結論】
E2濃度はFMD測定値に大きく影響を及ぼし,E2が低い若年女性は,E2濃度が高い同年代女性や同年代の男性に比べ,血管内皮機能が低下している可能性が示唆された.