Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 血管
動脈硬化

(S676)

頸動脈壁弾性特性およびbaPWVに対するイコサペント酸エチル製剤の作用について

Effects of Ethyl icosapentate on carotid arterial elastic modulus and baPWV in dyslipidemia patients

山岸 俊夫1, 長谷川 英之2, 金井 浩3

Toshio YAMAGISHI1, Hideyuki HASEGAWA2, Hiroshi KANAI3

1東北公済病院内科, 2東北大学大学院医工学研究科医工学専攻, 3東北大学大学院医工学研究科電子工学専攻

1Department of Internal Medicine, Tohoku Kosai Hospital, 2Department of Biomedical Engineering, Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 3Department of Electronic Engineering, Graduate School of Engineering, Tohoku University

キーワード :

【目的】
イコサペント酸エチル(EPA)は,コレステロールの腸管からの吸収や合成を抑え,排泄を促進させて,血液中のコレステロールや中性脂肪を低下させ,また,抗血小板作用により血栓の生成や血管の壁に付着するのを抑え,血管の弾力性を保つといわれている.今回,EPAの頸動脈壁弾性特性,IMT,脈波伝播速度(baPWV)などに対する作用ついて検討した.
【方法】
高脂血症を有する外来患者12人(平均年齢61才,非糖尿病)にEPA 1800mg/日を内服してもらい,生化学データ(脂肪酸高感度CRPなど),脈波伝播速度(baPWV),中心血圧(cSBP),内膜中膜肥厚(IMT)および血管弾性特性を12ヶ月間観察した.IMTおよび弾性特性(Eθ)は,頸動脈エコーにて左右の総頸動脈の各2箇所,Bulbを含まない平坦部分について,合計4箇所を計測部位とした.Eθの計測には位相差トラッキング法(Kanai et al. 2003 Circulation)を用い,IMT計測領域にて測定した.
【成績】
EPA製剤の投与前後でEPA/AA比は,0.38±0.19であったが,投与1,6,12ヶ月後には1.47±0.41,1.38±0.37,1.84±1.32と有意に上昇した(ANOVA, p<0.01).投与前のT-Cho,TG,HDL-C,LDL-C,血圧,脈圧,baPWV,cSBP,高感度CRP,IMT,Eθは,222.0±15.4mg/dL,156±10.3 mg/dL,54.1±15.7 mg/dL,136.8±14.8 mg/dL,125.6±9.2/79.7±1.9mmHg,45.9±8.0mmHg, 1560.4±168.4cm/sec, 129.0±12.1mmHg, 750.3±121.3ng/mL,0.97±0.24mm, 205.0±57.7kPaであった.EPA投与12ヶ月後には,TG(-16%)と高感度CRP(-66%)は有意(p<0.05)に低下,LDL-C(10%)低下傾向,HDL-C上昇傾向,血圧(-5%/-7%),脈圧(-3%),cSBP(-1%),baPWV(-5%)は減少傾向,であった.一方,頸動脈エコーでのEθ(-32%)は有意に減少したが,IMT(-3%)は減少傾向であった.
また血管弾性特性(Eθ)の成分の増分,減分をヒストグラムで解析したところ,薄い部分では,平滑筋の硬さに相当する成分が増えていたことから内皮機能の改善が考えられた
また別途66人を対象として血管内皮機能(FMD)を測定したところ,投与前3.1±0.7%から12ヶ月後は,3.4±0.8%に有意に増加していた.
【結論】
EPAは,高脂血症患者において,体表からの超音波による血管弾性特性を有意に変化させた.その機序として,脂質プロファイルや内皮機能の改善を生じうる可能性が示唆された.また頸動脈弾性特性は,EPAの作用をIMTの変化する前の早期に検出できる可能性が示唆された.