Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 頭頸部
頭頸部2・その他

(S673)

超音波検査における耳下腺原発の多形腺腫とワルチン腫瘍の鑑別診断

Differentiation of pleomorphic adenoma and Warthin’s tumor of the parotid gland by ultrasonography

佐藤 要, 古川 まどか, 久保田 彰, 木谷 洋輔

Kaname SATO, Madoka FURUKAWA, Akira KUBOTA, Yosuke KITANI

神奈川県立がんセンター頭頸部外科

Department of Head and Neck Surgery, Kanagawa Cancer Center

キーワード :

【目的】
耳下腺腫瘍の75%が良性腫瘍で,良性腫瘍のうち多形腺腫とワルチン腫瘍で95%を占めるとされている.多形腺腫は経過中に悪性腫瘍化する可能性や,術前に多形腺腫が疑われていても術後診断で初めて低から中悪性度癌と診断されることがある.一方,ワルチン腫瘍は悪性化する可能性は少なく,術前にワルチン腫瘍が強く疑われる場合,術後診断で悪性腫瘍と診断されることはきわめて少ない.このため,良性耳下腺腫瘍の多形腺腫とワルチン腫瘍の鑑別は臨床上重要であるが,両者を正確に区別するにはしばしば手術が必要とされる.そこで,両者を鑑別するための有用な超音波所見とその有用性について検討した.
【対象と方法】
2012年1月から2013年10月に当科で超音波診断を行った後に手術を施行し,多形腺腫またはワルチン腫瘍と診断された17例を対象として(多形腺腫/ワルチン腫瘍:11例/6例),多形腺腫とワルチン腫瘍の鑑別に有用な超音波所見を検討した.超音波所見として,①腫瘍の形状,②境界,③内部充実成分の性状,④内部嚢胞成分の性状,⑤内部血流,⑥後方エコー,⑦Elastographyなどに注目した.また,Fine needle aspilation cytology(FNAC)の位置づけについても検討した.
【結果】
形状に関しては,多形腺腫は分葉を伴う円形,ワルチン腫瘍は楕円形を示す傾向があった.境界はともに明瞭であるが,多形腺腫の方が正常耳下腺組織との境界が明瞭であった.多形腺腫の充実成分は内部が一様に均質であるのに対し,ワルチン腫瘍では内部の小嚢胞集簇による低エコー域を含んだ層状の内部エコーを示す傾向があった.肉眼的嚢胞が存在する場合,その形状は,多形腺腫の場合は充実成分の隙間に入り込むような三日月状の形状を示し,ワルチン腫瘍では円形で隔壁を経て連なっている像が多く認められた.腫瘍内部の血流は,多形腺腫は充実性部分の隙間を通る細い直線的な血流を認め,ワルチン腫瘍では充実性部分に多くの細かい点状血流を認めた.後方エコーはともに増強するが,多形腺腫の方が強く増強し,腫瘍と後方耳下腺組織の境界がより明瞭であった.ワルチン腫瘍はその柔らかさを反映してElastographyでは嚢胞パターンを多く認めた.①から⑦まで有所見率にはχ2検定による有意差を認めた.FNACでは,多形腺腫では間質内の粘液成分や筋上皮細胞を認めるものが多く,ワルチン腫瘍では好酸性細胞の集積とリンパ球を認めるものや,細胞成分が乏しいものが多い傾向があり,補助診断として有用と思われた.
【結語】
良性耳下腺腫瘍において,超音波診断による形状,境界,腫瘍内の充実成分と嚢胞成分の内部エコー像,後方エコー像,内部血流,Elastographyなどの所見が,多形腺腫とワルチン腫瘍の鑑別に有用な超音波所見であることが示唆された.