Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 頭頸部
頭頸部2・その他

(S672)

IgG4関連唾液腺炎の超音波所見の特徴

Ultrasonographic Features of IgG4-related sialadenitis

松田 枝里子, 福原 隆宏, 北野 博也

Eriko MATSUDA, Takahiro FUKUHARA, Hiroya KITANO

鳥取大学医学部感覚運動医学講座耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野

Department of Otolaryngology, Head and Neck Surgery, Tottori University Faculty of Medicine

キーワード :

【目的】
IgG4関連疾患は,近年提唱された新しい疾患概念で,リンパ球とIgG4陽性形質細胞の著しい浸潤と線維化により,全身諸臓器の腫大や結節・肥厚性病変などを認める原因不明の疾患である.頭頸部領域では,ミクリッツ病やキュットナー腫瘍がIgG4関連唾液腺炎に該当するといわれている.本疾患は臨床所見と血清学的所見,病理学的所見から診断されてきたが,近年は画像検査が著しく進歩し,超音波やCT・MRをきっかけに診断される報告が散見されるようになってきた.これらの画像検査の中でも,超音波検査は表在臓器の分解能に優れておりリアルタイムな診断ができるため,有用性が高いと思われる.このたびわれわれは,当科で経験したIgG4関連唾液腺炎の超音波所見について検討した.
【対象と方法】
2007年12月から2013年6月までの間に当科でIgG4関連唾液腺炎と診断した8症例(男性5例,女性3例,平均年齢69±8歳)の超音波所見を診療記録より検討した.疾患のうちわけは,ミクリッツ病3例,キュットナー腫瘍5例で,IgG4値は全例で135mg/mL以上であった.検査機器は,2011年10月末まではXario XG(東芝メディカルシステムズ株式会社),それ以降はACUSON S2000(持田シーメンスメディカルシステム株式会社)を使用し,プローブはリニア型を用いた.全例において,顎下腺と耳下腺の腫大の有無と形状,内部のエコーレベルと均質さ,エコーパターン,唾液腺周囲のリンパ節腫大の有無を評価し,6例ではカラードプラで顎下腺の血流評価も追加した.
【結果】
全症例でIgG4値が基準値以上であったが,1例のみ境界値であった.この1例は,自己免疫性膵炎の合併があり,顎下腺・耳下腺の腫大があったためミクリッツ病と診断されたが,超音波検査では変化を認めなかった.それ以外の7例では,超音波検査で,顎下腺は厚みが増し辺縁の鈍化した像として描出された.さらに内部エコーレベルの低下と不均質さを認め,顎下腺内には大小さまざまな小結節状の低エコー域と,網目状高エコーの特徴的な所見がみられた.そのうち6例で表面は凹凸の不整形を呈した.血流は,評価した6例すべてで認めたが,血流亢進の程度はさまざまであった.耳下腺に関しては,触診で耳下腺腫大を疑われた2例は,超音波で全景を見ることができず,明らかな腫大と判断するのは困難であったが,実質エコーレベルの低下と不均質さを認め,顎下腺と同様に大小さまざまな小結節状の低エコー域と,網目状高エコーの所見がみられた.唾液腺周囲のリンパ節腫大は7例で認めた.
【結論】
診断基準に唾液腺の腫大が挙げられるが,超音波検査では,特に耳下腺において腫大の判断が難しかった.この原因として腫大の評価基準があいまいであることが考えられた.一方,内部エコーの変化は全症例で確認できた.IgG4関連唾液腺炎の診断において,超音波検査で内部エコーの変化を捉える方が鋭敏である可能性が示された.