Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 頭頸部
頭頸部1

(S670)

結核性リンパ節炎の超音波所見と穿刺吸引細胞診の実態についての検討

Examination for ultrasonography findings of tuberculous adenitis and the actual conditions of the fine needle aspiration cytology

宮本 恭子, 紺野 啓, 山本 さやか, 宮本 倫聡, 鯉渕 晴美, 谷口 信行

Kyoko MIYAMOTO, Kei KONNO, Sayaka YAMAMOTO, Michiaki MIYAMOTO, Harumi KOIBUCHI, Nobuyuki TANIGUCHI

自治医科大学臨床検査医学

Department of Clinical Laboratory Medicine, Jichi Medical University School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
結核菌は,患者の分泌物より形成された飛沫核が空気中を浮遊することにより空気感染をおこすため,院内感染対策上非常に重要な細菌である.結核は,一般的な肺結核の他,リンパ節炎などの肺外結核の病型をとることが知られている.各種リンパ節疾患の診断目的に行われる穿刺吸引細胞診(FNAC: fine needle aspiration cytology)では,結核性リンパ節炎の場合,吸引した検体をスライドガラスに吹きつける際に,結核菌の飛沫核が形成される可能性があり,結核院内感染のリスクとなり得る.こうしたリスクを減らすためには,FNAC施行時に,超音波所見から結核性リンパ節炎の可能性を念頭におき,十分な感性防御策を講じることが重要と考えられるが,対策が不十分なのが現状である.今回我々は,こうした実態を明らかにするため,結核性リンパ節炎の超音波検査と,FNACの実態について検討を行った.
【対象と方法】
対象は,自治医大臨床検査部超音波検査室で,2013年1月から10月の間にリンパ節に対しFNACを施行した92例のうち,最終的に結核性リンパ節炎と診断された5例.これらの超音波所見をretrospectiveに検討し,文献的考察を行うとともに,FNAC施行時の実態について検討した.
【結果】
対象の5例は,細胞診あるいは生検の検体からの結核菌の証明またはPCR検査陽性の確認,もしくは,細胞診あるいは組織診における乾酪壊死の確認により,結核性リンパ節炎と診断された.うち,1例は事前に結核性リンパ節炎が疑われ,結核対応の感染予防策にてFNACが施行されたが,残りの4例は結核性リンパ節炎の可能性は考慮されず,FNAC用の感染防御対策のみでFNACが施行されていた.また,結核の院内感染例は認めなかった.
対象のリンパ節の超音波所見(症例数)を以下の通りであった.①複数の腫大リンパ節(5例).②リンパ節が2つ以上のリンパ節区分に存在(5例).③リンパ節の短径/長径≧0.5(5例).④リンパ節の辺縁が不整(3例).⑤内部エコーが不均一(5例).⑥リンパ節内部の嚢胞変性(4例).⑦リンパ節門の消失(3例),リンパ節門が不明瞭(2例).⑧後方エコーの増強(5例).⑨ドプラにてリンパ節内の血流シグナルが乏しい(3例).⑩リンパ節周囲のエコー輝度の上昇(5例).⑪リンパ節の融合傾向(2例).
【考察】
これまでの報告では,本例の超音波所見としては,上述の④⑤⑥⑧⑩⑪が比較的多いとされるが,うち⑪以外は,自験例でも,比較的多くの症例で認められた.しかし,これらの所見は,結核以外のリンパ節病変にも認められやすい比較的一般的な所見であり,
これらの超音波所見のみで,結核性リンパ節炎と診断するのは困難と考えられた.結核性リンパ節炎は,亜急性から慢性の経過をとり,病期によりリンパ節の性状が変化し,それに伴い多彩な超音波像を呈することが特徴と考えられる.また,リンパ節の超音波検査施行例には,観察期間が比較的長く,複数回の検査が施行される例も少ないことから,こうした症例では,超音波所見の変化に着目することにより,本症の診断が容易となる可能性があり,今後の症例の蓄積が望まれる.
今回の検討では,あらかじめ結核性リンパ節炎が疑われた1例以外の4例で,FNAC用の感染防御策のみでFNACが行われていたが,結核の院内感染例は報告されていない.当院では,こうした事態を想定し,リンパ節のFNAC用に専用の感染防御策を策定し,全例,これらのもとでFNACを行っているが,今回はこれが効を奏した可能性がある.今後は,さらに症例を重ね,この有用性についても検討していきたい.