進藤 久和¹, 小林 薫¹, 福島 光浩¹, 藪田 智範¹, 太田 寿², 宮内 昭¹

Hisakazu SHINDO¹, Kaoru KOBAYASHI¹, Mitsuhiro FUKUSHIMA¹, Tomonori YABUTA¹, Hisashi OOTA², Akira MIYAUCHI¹

¹隈病院外科, ²隈病院臨床検査科

¹Surgery, Kuma Hospital, ²Clinical Laboratory, Kuma Hospital

キーワード :

【はじめに】
大濾胞型乳頭癌papillary carcinoma, macrofollicular variant（以下，大濾胞型）は，コロイドの充満した大型濾胞からなる乳頭癌の特殊型で，腫瘍細胞の核には明らかな乳頭癌の特徴がみられる．本腫瘍の診断に明らかな定義はないが，通常は腫瘍組織の50％以上が大型濾胞からなる乳頭癌をいい，組織所見は腺腫様甲状腺腫やコロイド腺腫に類似する．JABTS甲状腺超音波診断ガイドブックには，本腫瘍の典型的なUS所見として，形状は整，境界は明瞭・平滑，内部エコーレベルは低から等とされており，腺腫や腺腫様甲状腺腫との鑑別が必要であるが，かなり困難である．
【対象と方法】
2008年1月から2013年11月までに当院で行った甲状腺乳頭癌の手術は5573症例で，うち病理学的に大濾胞型と診断された33病変（33症例，0.6％）のUS所見を検証した．
【結果】
女性23名，男性10名，平均年齢61歳．腫瘍径は9-52mm大（平均23mm）．初診時のUS検査で，腺腫様結節の判定（AN型）は11病変（33％），濾胞性腫瘍や良悪性境界（乳頭癌疑いも含む）の判定（境界型）は11病変（33％），乳頭癌や悪性の判定（PC型）は11病変（33％）であった．AN型は，いずれも上記の典型的なUS所見を呈しており，全例で病理学的にもリンパ節転移陰性であった．境界型は，形状整や境界明瞭でも腫瘍内部に高エコー輝点を有するものや卵殻石灰化などの副所見を伴っていた．PC型は，形状不整や境界粗雑の病変で，石灰化の所見がみられ，初診時のUSで6症例に頸部外側区域リンパ節転移を指摘されていた．内部エコーレベルは「等」が20病変，「やや低」が10病変であり，「低」は1病変，卵殻石灰化で未判定が2病変であった．
【考察・結語】
内部エコーレベル「等」「やや低」は，大型濾胞を有する病理組織所見を反映したUS所見と考えられる．大濾胞型の典型的なUS所見を呈する病変は3割程度であり，微細石灰化などの副所見や一般的な乳頭癌の所見を呈する病変も多くみられた．大濾胞型は乳頭癌の中でも稀であるが，USで腺腫様結節や濾胞性腫瘍を疑い，細胞診で乳頭癌の所見がみられた際は，本亜型も念頭におく必要がある．