Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 甲状腺
嚢胞関連他

(S666)

甲状腺嚢胞エタノール注入療法に於ける工夫:嚢胞内圧維持と前処理液の検討

Persuing the Better and Safer Methods for Ethanol Injection Therapy of Thyroid Cyst

安藝 朋子, 大野 洋介, 白石 美絵乃, 濱田 耕司, 小山 正剛, 木俣 元博, 五藤 良将, 田中 祐司

Tomoko AKI, Yousuke OONO, Mieno SHIRAISHI, Koji HAMADA, Seigo OYAMA, Motohiro KIMATA, Yoshimasa GOTOH, Yuji TANAKA

防衛医大総合臨床部/内分泌代謝内科

Genral Medicine/Endocrinology, National Defense Medical College

キーワード :

【背景と目的】
甲状腺嚢胞は高頻度の疾患で,超音波観察下のエタノール注入療法は嚢胞を簡単かつ無傷に潰せる非常に良い方法だが,施行の細かい点については諸法ある上に,いくつかの制限・限界もある.例えば,①必ずしも成功率が高くない;②内容液を抜くと容易に嚢胞内出血が始まる事があり治療も中断が必要になる(この場合,効果も全く期待できない);③Debrisや内容液の粘張性が高い場合,これを除去する事自体が大変だが,粘稠なままエタノールを注入すると凝集で針詰まりを起こす;④多胞性の場合(≒隔壁が多い),エタノールが行き渡りにくい;等である.対策として,①に対してはエタノール最終濃度を高める事が必要な一方,②への対策たる嚢胞内圧を下げない方法との両立が課題になる.③に対しては嚢胞内腔の洗浄に用いる溶液として必ずしも等張生理食塩水である必要は無く,低〜高張液迄,試行の意義がある.④については以前の本学会で多孔針の有用性について報告済である.今回,上記諸条件を検討してみた.
【方法A:実症例における検討】
①②③への対策として,嚢胞内容液を一気に除去せずに洗浄液と置換した後でエタノールと置換して行く方法を試行する.③の点については,低張〜高張液の種々の溶液での洗浄法を試す.
【方法B:基礎的検討】
継代培養細胞株を単層培養した上で,低張液〜高張液前処理→エタノール処理の効率を検討する.
【結果】
[症例1]37歳女性・巨大な多房性嚢胞.これまでに数回のエタノール療法を実施している.2回目の治療時に嚢胞液を除去するにつれ出血が始まり処置中断を余儀なくされた.3回目以降の処置では嚢胞内圧を下げない様に内容液を10mlずつ洗浄液と置換して粘稠度をさげた後に,エタノールと再置換する方法を採ったところ,嚢胞の著明な縮小を認めた.[症例2]51歳女性・1回目の治療では低張液を使用し内圧を下げない様に洗浄を繰り返す方法を採ったが,嚢胞縮小効果は限定的だった為,2回目の治療では高張食塩液を使用したところ,より高い嚢胞縮小効果が得られた.[症例3]59歳女性:1回目治療では内圧を下げない様に洗浄を繰り返す方法を採ったが,2回目には嚢胞自体の緊満度が低下していた為,嚢胞液を一気に除去してエタノール注入を行ったが,出血もなく嚢胞の縮小を認めた.
【考察と結語】
甲状腺嚢胞の超音波観察下エタノール注入療法においては,嚢胞内容液を一気に除去せずに(特に緊満度の高い嚢胞の場合),洗浄液と徐々に置換する形で洗浄した後でエタノールと徐々に置換して濃度を高めて行く方法が最良(安全&有効)と思われる.洗浄液として低張液を使用すると内容液の除去が容易になる一方,エタノール固定の効果が落ちる印象がある.他方,高張液で洗浄する事は,除去液自体の粘稠度はやや高くなるが排液効率上は決して不便とはならず(細胞を収縮させる為?),後のエタノール浸透・固定効果を出す上ではむしろ有利な可能性が考えられた.