Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 甲状腺
微小癌他

(S665)

嚢胞成分を伴う甲状腺乳頭癌の検討

Ultrasonographic findings and diagnosis of cystic papillary carcinoma of the thyroid gland

檜垣 直幸1, 村上 司1, 中村 友彦1, 西嶋 由衣1, 野口 仁志1, 内野 眞也3, 山下 裕人2, 野口 志郎3

Naoyuki HIGAKI1, Tsukasa MURAKAMI1, Tomohiko NAKAMURA1, Yui NISHIJIMA1, Hitoshi NOGUCHI1, Shinya UCHINO3, Hiroto YAMASHITA2, Shiro NOGUCHI3

1野口病院内科, 2野口病院病理, 3野口病院外科

1Department of Interenal Medicine, Noguchi Thyroid Clinic and Hospital Foundation, 2Department of Pathology, Noguchi Thyroid Clinic and Hospital Foundation, 3Department of Surgery, Noguchi Thyroid Clinic and Hospital Foundation

キーワード :

【背景と目的】
甲状腺嚢胞性病変のうち,充実成分がみられないいわゆる単純嚢胞に癌が存在する可能性はほぼない.しかし充実成分と嚢胞成分が混在する結節に癌が存在する可能性は低くはなく,また嚢胞形成を著明に示す甲状腺乳頭癌は良性病変と区別が困難なこともある.一方,嚢胞性病変は穿刺吸引細胞診で不適正検体になりやすく,悪性を見逃す可能性は10%前後に存在するとされる.今回当院における嚢胞成分を伴う甲状腺乳頭癌に対する超音波診断の現状について検討を行った.
【対象と方法】
2004年1月から2013年3月までの期間中,術前に穿刺吸引細胞診が施行され,病理組織で確定診断された嚢胞成分を伴う甲状腺乳頭癌症例116例を対象とした.それらの超音波所見,臨床像などについてレトロスペクティブに解析した.尚,10mm以下の微小癌は除外した.
【結果】
対象の年齢中央値は54歳(21〜81歳),男性43例,女性73例であった.腫瘍長径中央値は28mm(11〜92mm)であった.腫瘍充実部の内部エコーレベルが低であった例は77例,等であった例は39例,また充実部に高エコーを伴った例は80例,伴わなかった例は36例であった.術前超音波検査で悪性結節を疑った症例は89例(乳頭癌88例,濾胞癌1例)(76.7%),良性結節を疑った症例は27例(23.3%)であった.両群の腫瘍長径に差はみられなかった.良性結節を疑った27例のうち21例は腺腫様結節,他6例は濾胞腺腫が疑われていた.良性結節を疑った27例のうち1回の細胞診で悪性または悪性疑いと診断された症例は13例(48.1%),2回目の細胞診で悪性と診断された症例は5例(18.5%)であり,7例(25.9%)は良性結節として手術療法が施行されていた.一方,術前超音波検査で悪性結節を疑った症例のうち1または2回目の細胞診で悪性または悪性疑いと診断された症例は89例中80例(89.9%)であった.腺外浸潤はpEx0が47例,pEx1が61例,pEx2が8例であったが,pEx2の症例は全例術前超音波検査で悪性と評価されていた.
【結語】
嚢胞成分を伴う甲状腺乳頭癌は腫瘍経にかかわらず超音波検査のみで診断が困難な症例がある.また穿刺吸引細胞診は1回では不十分なこともあるため,複数回行い正診率を向上させ診療にあたる必要があると考えられた.