Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 甲状腺
微小癌他

(S664)

半年間で新たに発見された甲状腺微小乳頭癌の一例

One case of thyroid papillary carcinoma micro newly discovered in half a year

引田 大智1, 太田 智子1, 佐藤 美佳子1, 大河原 宏征1, 東 巌1, 大場 隆夫1, 山本 浩之2, 金子 千束2, 重田 真幸2, 貴田岡 正史2

Daichi HIKIDA1, Tomoko OTA1, Mikako SATO1, Hiroyuki OKAWARA1, Iwao HIGASHI1, Takao OBA1, Hiroyuki YAMAMOTO2, Chizuka KANEKO2, Masayuki SHIGETA2, Masafumi KITAOKA2

1公立昭和病院臨床検査科, 2公立昭和病院内分泌代謝科

1Clinical Laboratory Department, Showa General Hospital, 2Internal Medicine of Endocrinology and Metabolism, Showa General Hospital

キーワード :

【はじめに】
甲状腺超音波診断の指針における充実性病変の取り扱いは病変が5mm以下である場合,経過観察を基本とする.ただし,頸部リンパ節転移や遠隔転移が疑われた場合,CEAやカルシトニンなどのマーカーが高値であった場合には穿刺吸引細胞診を行うとされている.今回我々は,5mm以下であるが悪性を強く疑わせる超音波所見をもつ腫瘤の穿刺吸引細胞診を行い,甲状腺乳頭癌であった一例を報告する.
【症例】
49歳女性,健康診断にて甲状腺腫脹を指摘され近医受診.手指の振戦をはじめとする自覚症状もなく,甲状腺機能(TSH 2.8μIU/ml,f-T2.9pg/ml,f-T0.8ng/dl)と基準値内であった.超音波検査では甲状腺峡部に低エコー腫瘤,甲状腺左葉中部に低エコー腫瘤が認められ精査のため当院紹介となった.当院において(サイログロブリン105ng/ml,抗サイログロブリン抗体260IU/ml,抗TPO抗体99IU/ml)とやや高く,超音波検査で甲状腺峡部に(横19.4mm×縦20.1mm×厚4.5mm体積0.9cm),甲状腺左葉中部に(横5.4mm×縦7.9mm×厚4.8mm体積0.1cm)の結節が確認された.甲状腺峡部の一部境界不明瞭,内部不均一な結節より穿刺吸引細胞診を施行しClassⅡで6ヶ月後再検となった.
6ヶ月後の再検にて上記の2つに加え左葉中部やや上極に(横2.9mm×縦3.7mm×厚3.5mm体積0.04cm)の小結節が新たに確認された.境界不明瞭,微細多発の高輝度エコーなど小さいながらも悪性を強く疑わせる所見を示した.複数病変が存在し,すでに他部位の穿刺吸引細胞診を受けていた本人が強く希望したため,この病変に対して穿刺吸引細胞診を施行した.結果はClassⅡbであったが,核内封入体様の構造がみられ悪性の可能性が否定できなかったため,再検を行ったところClassⅣであった.存在した3病変を含めた甲状腺亜全摘術を施行し,病理診断では微小乳頭癌および腺腫様甲状腺腫であった.
【まとめ】
今回,甲状腺乳頭癌と診断された病変の大きさは横2.9mm×縦3.7mm×厚3.5mmと5mm以下であったが,半年前の検査で,この病変は指摘されておらず新たに生じた可能性が高いと判断された.
甲状腺乳頭癌の進行は遅いとされてはいるものの,転移のリスクを考えれば早期発見にこしたことはない.本症例の病変がいわゆるlatent癌であった可能性は否定できないが,比較的早い増殖とサイズの増大という特性を持つことも想定し,本人の希望で他病変を含めた甲状腺亜全摘術を施行するに至った.超音波検査を行うにあたっては今回のように小さな病変を見逃さないことがより重要で,手術適応も精度の高い検査が繰り返されることによって更に減少する可能性が示唆された.