太田 寿¹, 村田 直¹, 大下 真紀¹, 藪田 智範², 福島 光浩², 廣川 満良⁴, 小林 薫², 中村 浩淑³, 網野 信行³, 宮内 昭²

Hisashi OTA¹, Nao MURATA¹, Maki OSHITA¹, Tomonori YABUTA², Mitsuhiro FUKUSHIMA², Mitsuyoshi HIROKAWA⁴, Kaoru KOBAYASHI², Hirotoshi NAKAMURA³, Nobuyuki AMINO³, Akira MIYAUCHI²

¹隈病院臨床検査科, ²隈病院外科, ³隈病院内科, ⁴隈病院病理診断科

¹Clinical Laboratory, Kuma Hospital, ²Sugery, Kuma Hospital, ³Internal Medicine, Kuma Hospital, ⁴Diagnostic Pathology, Kuma Hospital

キーワード :

【はじめに】
甲状腺悪性リンパ腫の典型的超音波所見は，主所見として，1）形状：不整，2）内部エコーレベル：低，3）後方エコーの増強がある．また腫瘍の増殖様式からブロッコリー状，入道雲状に良く似た形状を示す場合がある．
副所見としては症例によって「まだら状（虫喰い様）低エコー」，「内部の高エコーライン（切れ込み像）」＊）と頸部リンパ節腫大がみられることがある．これらの副所見が出現する頻度と病理組織型についての差異について検討する．
＊）「内部の高エコーライン（切れ込み像）」は一見切れ込みのように見えるが，病理学的には結節同士が近接して増大するため正常組織が切れ込みに見えてくる．
【対象と方法】
当院で2005年から2013年に病理組織学的に甲状腺悪性リンパ腫と診断された173例を対象とし，節外性辺縁帯B細胞リンパ腫（MALTリンパ腫）114例とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫（DLBCL）59例である．
方法として，内部エコーの「まだら状（虫喰い様）低エコー」，「内部の高エコーライン（切れ込み像）」，頸部リンパ節腫大のエコー所見をretrospectiveに検討した．使用した装置は，東芝Aplio 80，500，9MHzと14MHzの電子リニアプローブを用いた．
【結果】
1）悪性リンパ腫全体での各所見の頻度は，「まだら状（虫喰い様）低エコー」で61例（35.3％），内部の高エコーライン（切れ込み像）」で77例（44.5％），頸部リンパ節腫大で32例（18.5％）であった．
2）組織型別では，「まだら状（虫喰い様）低エコー」はMALTリンパ腫で44.7％，DLBCLで16.9％（р=0.00029），「内部の高エコーライン（切れ込み像）」はMALTリンパ腫で38.6％，DLBCLで55.9％（р=0.02963），また頸部リンパ節腫大ではMALTリンパ腫で11.4％，DLBCLで32.2％（р=0.00084）であった．
【結語】
副所見である「まだら状（虫喰い様）低エコー」はMALTリンパ腫で有意に，また「内部の高エコーライン（切れ込み像）」と「頸部リンパ節腫大」はDLBCLで有意に高い頻度で出現することが確認された．
甲状腺悪性リンパ腫の超音波診断には，主所見以外の副所見も有効である．