Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 甲状腺
その他

(S658)

超音波検査における甲状腺乳頭癌頸部リンパ節転移の評価

Ultrasound Evaluation of Cervical Lymph Node Metastasis of Papillary Thyroid Carcinoma

髙野 千明1, 清松 裕子2, 中島 真名美1, 上牧 隆1, 文 由美2, 鯨岡 結賀2, 池田 達彦3, 井口 研子3, 坂東 裕子3

Chiaki TAKANO1, Hiroko KIYOMATSU2, Manami NAKAJIMA1, Takashi KAMIMAKI1, Yumi MOON2, Yuka KUJIRAOKA2, Tatsuhiko IKEDA3, Akiko IGUCHI-MANAKA3, Hiroko BANDO3

1筑波大学附属病院検査部, 2筑波大学附属病院乳腺甲状腺内分泌外科, 3筑波大学医学医療系

1Department of Clinical Laboratories, University of Tsukuba Hospital, 2Department of Breast and Endocrine Surgery, University of Tsukuba Hospital, 3Faculty of Medicine, University of Tsukuba

キーワード :

【背景】
甲状腺の悪性腫瘍で最も頻度が高い癌は甲状腺乳頭癌であり甲状腺癌の90%を占め,高頻度に頸部リンパ節転移が認められることが知られている.反回神経周囲と患側の側頸部リンパ節が転移の好発部位であり,リンパ節郭清範囲は病状により反回神経周囲,患側の側頸部リンパ節,対側の側頸部リンパ節,上縦隔リンパ節が選択される.近年微小癌等において外側区域リンパ節の郭清を省略する縮小手術が選択される場合があるが,局所再発のリスクなどを考慮する上で,術前の画像診断による転移の有無の評価は重要な検討課題である.今回我々は甲状腺乳頭癌と診断され手術を行った症例を対象に,術前の超音波診断と術後の病理診断結果を比較検討した.
【対象・方法】
2012年4月1日〜2013年3月31日の1年間に当院で術前超音波検査および手術を行った甲状腺乳頭癌51例を対象とした.超音波検査による甲状腺およびリンパ節の評価はJABTSの甲状腺超音波診断ガイドブック(改訂第2版)を基準とした.リンパ節の位置は甲状腺癌取り扱い規約に基づき中央区域リンパ節はⅠ〜Ⅳ,外側区域リンパ節はⅤ以上とした.超音波診断装置は東芝メディカルシステムズAplioXV SSA-770A, SSA-700A, SSA-790A,日立アロカHI Vision 900,GEヘルスケアLOGIQ E9を使用した.超音波検査は最初に体表超音波検査士2名を含む6名の臨床検査技師が施行し,その場で超音波専門医5名を含む6名の医師がダブルチェックを行う方式としている.
【結果】
組織診断で頸部リンパ節転移は51例中39例(76%)に認めた.甲状腺乳頭癌の腺内転移もしくは多発癌を28例症例に認め,そのうちリンパ節転移は21例(75%),外側区域へのリンパ節転移を14例(50%)に認めた.
超音波検査で外側区域以上のリンパ節転移の評価は感度が63.6%,特異度68.9%であり正診率66.6%であった.腫瘍径10mm以下の微小癌は17例であり,13例にリンパ節転移を認め,5例は外側区域への転移を認めた.微小癌では超音波による外側区域以上のリンパ節転移診断は感度が42.8%,特異度80%,正診率64.7%であった.
【考察】
術前の超音波検査による外側区域以上のリンパ節転移の評価は感度・特異度ともに良好とは言えず,確実な転移予測は困難と考える.また微小癌において29%の症例で外側区域へのリンパ節転移を認めていたが,転移評価の特異度は80%と比較的良好であり,今後の検査で参考となる結果であった.甲状腺乳頭癌手術においてリンパ節郭清範囲の決定に際し,術前の評価は重要であり慎重な超音波検査の実施が必要と考えられた.