Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 乳腺
造影・Vascularity2

(S653)

乳腺腫瘤のバスキュラリティ評価における「入射角(Incident angle)」の再検討

Utility of“Incident angle of the plunging artery”for quantitative evaluation of breast tumor vascularity

梅本 剛1, 植野 映1, 東野 英利子2, 森島 勇1

Takeshi UMEMOTO1, Ei UENO1, Eriko TOHNO2, Isamu MORISHIMA1

1公益財団法人筑波メディカルセンター診療部門乳腺科, 2公益財団法人筑波メディカルセンターつくば総合健診センター

1Department of Senology, Tsukuba Medical Center Foundation, 2Total Health Evaluation Center Tsukuba, Tsukuba Medical Center Foundation

キーワード :

【背景】
乳腺腫瘤のバスキュラリティの評価は,良悪性判定や存在診断などの参考所見として,有用とされている.近年の超音波診断装置の性能向上により,良性腫瘤の内部に豊富な血流シグナルを認めることが,日常臨床にてしばしば経験され,かえって良悪性判定に迷うこともある.腫瘤血管の走行の評価をより客観的に行う手法として,鯨岡,植野らは,腫瘤内部に血管が流入する角度である「入射角(incident angle)」に着目し,線維腺腫と浸潤癌を対象とした後向き研究から,入射角30°をカットオフとし,悪性の感度/特異度が0.86/0.88であったと報告している.
【対象・方法】
2011年5月〜2012年11月の期間,当科初診時に乳房超音波(Bモード,カラードプラ)を施行し,入射角測定の超音波画像を記録した乳腺腫瘤について,その後,a)針生検,b)穿刺吸引細胞診のち6ケ月以上経過観察,あるいはc)12ケ月以上経過観察,のいずれかにて臨床診断を得た症例を対象とした.入射角の測定は鯨岡,植野ら(※)を参照した.
【結果】
乳腺腫瘤49例(平均49.8歳)を対象に,解析が可能であった.臨床診断は,良性/悪性が21/28例であり,内訳は,線維腺腫/乳管内増殖性病変(良性/異型伴う)/非浸潤癌/浸潤癌が15/6(5/1)/2/26例であった.入射角の平均値は,良性/悪性で29.5°(11〜59)/10.4°(1〜35)であった(p<0.01).臨床診断ごとの入射角の平均値は,線維腺腫/乳管内増殖性病変/非浸潤癌/浸潤癌が32.4/22.2/9.0/10.5°であり,違いを認めた.悪性では,入射角>30°は悪性リンパ腫の1例のみであった.対象のうち,入射角≦5°は全て浸潤癌(9例)であった.ROC解析から,入射角18°をカットオフとすると,悪性の感度/特異度が0.81/0.85であり,AUCが0.91(95%CI: 0.991〜0.846)であった.
【考察・まとめ】
良悪性判定に迷う乳腺腫瘤において,入射角の評価は,バスキュラリティを簡便かつ定量的に評価可能な手法であり,臨床診断に寄与すると考えられた.(※)入射角は,「腫瘤血管の流入部における,法線(腫瘤の接線と垂直となる線)と流入血管とのなす角度」と定義され,腫瘤中心に向かい垂直に流入する血管は,入射角0°と記述される.
【文献】
Kujiraoka Y, Ueno E, Tohno E, et al. Research and Development in Breast Ultrasound, Tokyo: Springer-Verlag: 2005.