Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2014 - Vol.41

Vol.41 No.Supplement

一般口演 乳腺
elastography

(S651)

浸潤性小葉癌のReal-time tissue Elastographyを加味した超音波所見の検討

Ultrasonic diagnosis of invasive lobular carcinoma

伊藤 吾子

Ako ITOH

株式会社日立製作所日立総合病院外科

Surgery, Hitachi General Hospital

キーワード :

【はじめに】
浸潤性小葉癌の超音波像の典型的なものは「後方エコーの高度減弱する形状不整で,境界不明瞭かつ内部エコーに乏しい充実性低エコー腫瘤像」とされているが,その他多彩な超音波像を呈する.また細胞密度が粗で線維成分に富むため,針生検等の組織診断が必要となることから,超音波所見で小葉癌を疑えるかどうかが重要となる.Real-time tissue Elastography(RTE)による硬さ情報を加味することで,浸潤性小葉癌を超音波で診断可能かどうか検討した.
【対象】
2005年9月〜2013年8月に当院にて診断治療した浸潤性小葉癌51例のうち,RTEを併用し診断した41例.全て女性36歳‐84歳(中央値:63歳)
【方法】
レトロスペクティブに超音波画像を見直し,B-mode所見を(1)典型例(境界不明瞭,内部エコーに乏しい低エコー腫瘤,後方エコー高度減弱),(2)非腫瘤型(境界不明瞭な低エコー域),(3)硬癌型(haloを伴う不整型腫瘤),(4)腫瘤型(haloを伴わない低エコー腫瘤)に分類した.各々のRTE所見について検討した.
【結果】
B-modeの分類:(1)典型例は8例(19.5%),(2)非腫瘤型は6例(14.6%),(3)硬癌型は14例(34.1%),(4)腫瘤型は13例(31.7%)であった.RTEの結果:(1)典型例はすべてTsukuba score5であったが,後方エコーの高度減弱により深部の信号がとれずアーチファクトとして抜けてしまうものが3例(37.5%)あった.(2)非腫瘤型はすべてTsukuba score5であった.(3)硬癌型もすべてTsukuba score5であったが,深部の信号がとれないものが1例あった.(4)腫瘤型はTsukuba score5が7例,score4が4例,score3,2が1例ずつであった.
【考察】
浸潤性小葉癌のB-mode像において典型例は約20%程度であり,腫瘤を示すものが約65%を占めたRTEでは多くがTsukuba score5を示したが,深部の信号がとれず,浅層のみでの判断を要するものが10%程度あった.典型例は糖尿病性乳腺症や線維症との鑑別を要し,RTEの結果を加えても良悪性診断には針生検が必須であると考えた.非腫瘤型はDCISや乳腺症との鑑別を要するが,RTEで硬いことが癌を疑う一因となると考えた.硬癌型は癌である診断は容易であり,小葉癌はRTEで硬癌に比して,方位方向に広く硬い(D/W比が低い)ことが特徴的であった.腫瘤型はRTEの結果を加えることで良性腫瘤病変との鑑別はある程度可能であったが,小葉癌との診断は困難であった.
【結語】
浸潤性小葉癌の超音波診断においてRTEの結果を加味することで,針生検以上の検査が必要であるという判断は可能となった.